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韓国統一省が発表した「北朝鮮の経済・社会実態認識報告書」によると、2011年から2015年に脱北した2500人のうち、32.3%は固定電話を、23.8%は携帯電話を所有していた。一方、2016年から2020年に脱北した913人の場合、それぞれ52.5%、58.5%に増加している。

平壌出身者の場合は固定電話が64.5%に携帯電話が55.0%、韓国との軍事境界線や中国との国境に接する地域の出身者は22.4%、18.0%、それ以外の地域出身者は18.7%、16.4%だった。

発展途上国では、従来の技術の普及が進む前に、一足飛びに新しい技術の普及が進む「リープフロッグ現象」がしばしば起きるが、固定電話の普及が遅れていた北朝鮮では、必ずしもその流れに沿っていないことが、数字から読み取れる。また、国境に面した地域に住む人の方がそれ以外の地方に住む人より、固定電話、携帯電話ともに普及率が高いことがわかる。

合法的な貿易や密輸を問わず外国とのやり取りが多いことと、そのおかげで経済的に豊かなことが関係していると思われる。

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中国と国境を接する平安北道(ピョンアンブクト)では、最近になって携帯電話の通信量が増える一方で、固定電話のメリットも見直され、契約数が増加していると、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

昨年に国境封鎖が解かれたことで、道内でも国境に接する新義州(シニジュ)、龍川(リョンチョン)、義州(ウィジュ)、鉄山(チョルサン)などでは、具体的な数字は不明ながら、商品の流通量と共に、携帯電話のデータ通信量が増えている。平安北道逓信局(電話局、携帯電話営業所、郵便局を兼ねた役所)は、課された1年分のノルマを第一四半期で達成しようと意気込んでいる。

そんな中で、地域の卸売業者は、通信費の高い携帯電話より、相対的に安い固定電話を利用するようになっている。それも一家に電話機を2台設置する場合がある。

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通信インフラの遅れている北朝鮮では、1回線を2軒で共有することが多いが、盗聴のリスクが高かった。回線を独占してしまえば、その心配が減るというわけだ。

だが、その費用は決して安くない。

新義州で固定電話を設置するには350米ドル(約5万2700円)から450ドル(約6万7700円)、龍川では400ドル(約6万200円)から500ドル(約7万5300円)の初期費用がかかる。ちなみに平壌では、100ドル(約1万5000円)から250ドル(約3万7600円)で済む。ちなみにNTTの場合、固定電話の初期費用は、基本工事費、交換機等工事費、標準工事費を合わせても1万2980円だ。

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龍川が高いのは、密輸が新義州より活発だからというのが情報筋の説明だ。

「中国から入ってきた品物は、新義州税関を経て各地域に出荷されるが、必ず通過するのが龍川だ。品物が最も早く入荷し、卸売価格が決められるのが龍川だけあって、固定電話の需要も、設置費用も高い」

あまりの高さに不満を抱いた人々は、朝鮮労働党龍川郡委員会(道党)に信訴(告発)を行った。道党は逓信所に対する検閲(監査)を行ったが、道党の幹部と龍川逓信所の所長が懇ろな関係にあることから、告発は握りつぶされてしまい、住民は憤慨しているという。

(参考記事:息子の交通死亡事故をもみ消した北朝鮮の悪徳警官