北朝鮮ではここ数年、覚せい剤取引などを理由にした処刑が増えており、公開よりは非公開で執行される処刑が多いくなっている。また、当局が自ら刑法を破って未成年者に死刑を宣告したり、妊娠女性に対して死刑を執行したりするなどの事例も見られる――。
韓国政府の統一研究院は10日、ソウル中区の韓国プレスセンターで記者懇談会を開き、こうした内容を含む「北朝鮮人権白書」の2023年版を公開した。白書は「2015年の時点で、北朝鮮刑法は8つの罪目に対して法定最高刑として死刑を規定していたのに対し、2022年に改正された刑法では11つの罪目に対して法定最高刑として死刑を規定している」と指摘。また「ここ数年間、迷信行為(宗教や占いなど)や麻薬(覚せい剤含む)取引行為と韓国の映像コンテンツの視聴・流布などを理由にした死刑執行が増えた」としている。
北朝鮮は刑法第37条で、犯行当時18歳に満たなかった者に対して死刑を宣告できず、妊娠した女性に対しては死刑を執行できないと規定している。
(参考記事:北朝鮮の女子高生が「骨と皮だけ」にされた禁断の行為)
しかし、統一研究院などの調査では、北朝鮮がこれに違反した事例が多数、把握されている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)も2022年12月3日、北朝鮮の両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)市で韓流ドラマや映画などを視聴し、拡散させたとして摘発された高校生ら3人が、10月に公開処刑されていたとする衝撃的な情報を伝えた。
処刑された3人のうち、2人は韓流コンテンツやアダルトビデオを流布したとして摘発された。もうひとりは継母を殺害したとして逮捕されていたという。
RFAはさらに昨年2月、平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋の話として、未成年がこうした罪で摘発されれば、その親にも責任が及びかねなくなったと伝えた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面徳川(トクチョン)市内の各人民班(町内会)に朝鮮労働党徳川市委員会(市党)の幹部が直接出向き、こうした方針を下達。「親が市場での商売にかかりっきりになり、子どものしつけをなおざりにすると、子どもが不良になることに気づいていない」とし、そうなれば社会への見せしめとして家族全員が監獄に行くことになると警告したのだという。
こうした状況もあり、10代の子どもを持つ北朝鮮の親たちは最近、果てしない不安に駆られているという。親がいくら厳しく言っても、聞く耳を持たない子どもはどの国にもいる。自分の身を滅ぼしかねない危険な行為であっても、試したくなる若者がいるのも同様だ。
だが、北朝鮮当局がこうしたやり方を、例外なく徹底するとも思えない。なぜなら韓流とまったく無縁に過ごしている北朝鮮の若者は、ほとんどゼロに近いはずだからだ。