「生きるために仕方なく…」普通の人々を狙う金正恩の公開処刑

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東京新聞は今月11日、「北朝鮮で昨年8月に新型コロナウイルス感染症の収束宣言が出されて以降、公開処刑が増えている」と報じた。

同紙が北朝鮮の内部事情に詳しい関係者に取材したところでは、「中国と国境を接する北部・両江道リャンガンド恵山ヘサンの飛行場で先月下旬、男性1人が公開銃殺された。戦時物資とされる医薬品を盗み出し、薬品商に横流しした罪だという。処刑現場には、地域住民が当局の指示で集められた」という。

また、「この飛行場では8月下旬にも、男性7人、女性2人が公開銃殺された。2万人近い住民が処刑場を囲んだという。処刑の理由は2017年から今年にかけ、国が保有する牛約2000頭を管理者から不正に購入し、食肉処理して売り払ったというものだった」と伝えた。

この2件の処刑についてはいずれも、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)と日本のアジアプレスが先んじて報じていた。

北朝鮮の内部情報は裏付け取材が難しく、RFAやアジアプレス、韓国のデイリーNKなどはある意味で果敢に報じる一方、日本のメディアはより慎重だ。それだけに、これら性格の異なるメディアで一致する情報は相対的に重みが増す。

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こうした相対的に確度の高い形で公開処刑の乱発が伝えられたのは、金正恩総書記の執権から間もない2013年~2015年以来と思われる。

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2013年には人気芸能人らの処刑が相次いだほか、韓国紙・中央日報は11月11日付の報道で、北朝鮮の東部・元山など主要7都市で同月3日、韓国ドラマを視聴したりポルノを流通させたりしたとして、住民約80人が公開処刑されたと報じた。北朝鮮を最近訪問した内部事情に詳しい人物が、処刑を目撃した住民から聞いた話として伝えた。

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同紙によれば、処刑は元山のほか、新義州、平城、清津、沙里院などで行われた。元山では公安当局が約1万人を競技場に集め、風呂敷を頭にかぶせた住民8人を木に縛り付け、機関銃で射殺したとした。

そして年末にかけては金正恩氏の叔父・張成沢(チャン・ソンテク)元朝鮮労働党行政部長と側近らが処刑された。2015年には玄永哲(ヒョン・ヨンチョル)人民武力部長(国防相)が公開処刑された。

当時と最近では違いもある。2013年当時は金正恩氏が自らの権力基盤を固めていた時期であり、特別な地位にある人々の粛清が目立った。一方、最近処刑されているのは普通の人々で、経済事犯に対する厳罰である。こうして処刑される経済事犯は、権力を悪用した「巨悪」よりも、生きるために仕方なく行われたものが多いように見える。