国連の安全保障理事会が17日、6年ぶりに、北朝鮮における人権侵害を議論する公開会合を開催する見通しだ。
北朝鮮の人権状況を巡っては様々な問題が指摘されてきたが、近年では新型コロナウイルス対策との関連で著しい人権侵害が起きているとの指摘がなされている。
北朝鮮は2020年以降、国境を封鎖して貿易も停止し、国内移動も極度に制限している。これにより、庶民にとってただでさえ困難だった生計の維持がより難しくなり、食糧へのアクセスも悪化した。国民の生活実態を無視した強引なロックダウンで、数多くの家族が飢えにより全員死亡する悲劇をたどった。
さらに同年8月には、国境に近づく者を無警告で射殺する措置が取られた。これにより射殺された人々の遺体が、しばらくその場に放置されると言った猟奇的行為すら見られた。
(参考記事:北朝鮮国民が目を背ける「見せしめ射殺体」の衝撃の現場)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面デイリーNKの朝鮮人民軍(北朝鮮軍)内部情報筋の伝えた実態は衝撃的なものだ。
両江道(リャンガンド)金亨稷(キムヒョンジク)郡を流れる鴨緑江で同年10月24日の夜、女性が射殺される事件が起きた。
当局は、国境地帯に午後6時以降の夜間通行禁止令を出しているが、警備の兵士は、闇夜に動く人影を見つけ、密輸業者だと判断した。「容赦なしに銃撃してもよい」との命令を受けていた彼は、当然のように引き金を引いた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面射殺されたのは、近隣の村に住んでいた40代女性のチャンさん。密輸業者ではなく、小児マヒを患って障害を負い、老いた母親に介護されて暮らしていた。
地域一帯に夜間通行禁止令が出ていたことを認識できていなかった彼女は、母親がウトウトしている間に、いつものように2リットルのバケツを持って、水を汲みに鴨緑江にやってきたところを狙撃されたのだった。
母親は猛烈に抗議したが、兵士が所属する第7軍団当局は一切の謝罪も補償も行わず、むしろ発砲した兵士を「党の意図どおりに国境地帯の衛戍勤務を規定通りに行った功労を認める」として、朝鮮労働党への入党手続きを進めたとされる。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面軍団当局は、事件で兵士の間に動揺が広がるのを防ぐために、当該の兵士を表彰したというのが、情報筋の説明だ。
さらに朝鮮人民軍総政治局では、この件を模範事例として持ち上げたという。何故なら、コロナ対策の防疫措置は、金正恩総書記が自ら総責任者となっていたからだ。女性を射殺した兵士は、金正恩氏の命令を忠実に守ったというわけだ。
北朝鮮は、長らく「国内のコロナ感染者はゼロ」と強弁を続け、それがもたなくなると、大量感染を認めた上で「収束した」と宣言した。だが実際には、宣言後にもコロナ感染が疑われる発熱患者が大量に出ている。
結局、多数の国民の生命を犠牲にした金正恩氏のコロナ対策は、単に迷走を重ねただけだったのだ。国際社会から「コロナ対策の人権侵害」を指弾されることは金正恩氏にとって、自身の無能を指摘されているのと同じなのである。