「食べる物が何もない」金正恩の足下で倒れる農民たち

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北朝鮮では今、国民総動員体制で「田植え戦闘」が行われている。国営の朝鮮中央通信は3日、全国の農村で基本面積の田植えが終わったと報じた。基本面積とは、農地の全体面積から大麦、小麦、ジャガイモなどを栽培している部分を除いたもので、全体の6割を占める。

だが、本当に終わったのかは定かでない。肝心の農民たちから「仕事に出られない」という声が聞こえているからだ。農村部における深刻な飢餓の状況を、咸鏡南道(ハムギョンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

新興(シヌン)郡のある協同農場に所属する40代の農民は、畑仕事に出ることができなくなった。というのも、おりからの食糧難でまともに食事を取れないからだ。農場の作業班、分組の人たちが少しずつ、麦を集めて届けたが、未だに立ち上がれずにいるという。

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また、栄光(ヨングァン)郡の上通里(サントンリ)では、一家4人が倒れた状態で隣人に発見される事件が起きた。村の人々がトウモロコシ2キロと麺3キロを持ち寄り、村の朝鮮労働党委員会と農場管理委員会の人が届けて、「皆が苦しい時期だから、共に克服しよう」と元気づけたとのことだ。

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いずれも村や農場の人たちの優しさが、餓死寸前にあった人々を救ったという事例だが、そう喜んでもいられない。この地域の農村では10世帯のうち6世帯が、食べ物が完全に底をついた、いわゆる「絶糧世帯」となってしまった。残りも1日1食がやっとという状態。そんな中でも、さらに苦しい人のために少しずつ食べ物を出し合っているのだ。だが、国からの支援は一切ない。

「他の対策はなく、共に克服しようと言っても、皆がポリッコゲをどう乗り越えるかという心配でため息をついている」
「毎年5月と6月のポリッコゲは多くの人が食べるものがなく苦労するが、今年は仕事に出てこれないほど食糧難が深刻で、栄養失調で苦しむ人も増えている」
(情報筋)

ポリッコゲとは、前年の収穫の蓄えが底をつく春窮期を意味する。これがコロナ禍の国境封鎖・貿易停止でますます早まり、実りの季節の秋にも餓死者が出るほどだ。

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韓国の情報機関、国家情報院によると、北朝鮮の餓死者は例年の3倍に達しているという。また、例年なら麦の収穫が始まる6月には徐々に食糧難が解消するが、最近は毎年自然災害による被害が相次いでおり、「5月から8月の間も北朝鮮の食糧安保に深刻な影響を与える可能性がある」と指摘した。

北朝鮮とて何もしていないわけではない。

中国の海関総署の統計では、昨年10月から今年3月までの半年間、北朝鮮が中国から輸入したコメの量は、コロナ前の年間輸入量の3倍以上となっている。その中には、北朝鮮の人々に、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」を思い起こさせるインディカ米も含まれている。また、ロシアからも大量の小麦粉を輸入している。

(参考記事:北朝鮮国民が「大量餓死」を想起する”インディカ米騒動”

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ただ、高位幹部、平壌市民、治安機関の関係者などに優先的に配給するのが一般的。末端の農民の手には届いていないものと思われる。