北朝鮮で麻薬の「アヘン」を薬の代用品をして使う人が後を絶たない。
故金正日総書記の指示で、1992年から「白桔梗(ペクトラジ)事業」と称して始まったアヘン栽培。輸出して外貨を稼ぐ目的だったが、その一部が横流しで国内にも流通するようになり、不足する薬の代わりに使ったことで、中毒になる人が続出している。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、会寧(フェリョン)に住む40代のキムさんもその一人だった。下痢、嘔吐、頭痛の治療目的でアヘンを使っていた。
実際、下痢止めや咳止めとして使われていた歴史があるため、全く根拠がないわけではないが、副作用のほうが大きいことは説明する必要もないだろう。ところが北朝鮮では「脳の血栓を溶かす」「1年に1〜2回注射すれば予防になる」との俗説、さらには万病に効く薬といった根拠のない噂が広がってしまった。
2010年代には、ピンドゥ(覚せい剤)が薬の代用として使われていたが、コロナ禍で医薬品不足が深刻化したことで価格が高騰、その代わりにアヘンが広く使われるようになり、中毒者が増えたという。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面ピンドゥやアヘンの密売人に対しては極刑が下されることも少なくないが、根絶には程遠いのが実態だ。
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真面目に仕事をしていたキムさんだったが、アヘン中毒になり、仕事を辞め、家を売り払い、そのカネでアヘンを買うようになった。妻には愛想を尽かされ三下り半を突きつけられ、息子と二人暮らししていたが、その息子の服までアヘンを買うために売り払う始末。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面行き場を失った彼は、実の母親の家に転がり込んだ。しかし、一文無しのアヘン中毒者を歓迎する者は誰もおらず、祖母と叔父夫婦からのプレッシャーに耐えかね、息子は家出してしまった。そんな彼に対する隣人の視線も厳しい。
4年ほど前には両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)で、若者と兵士との間で乱闘騒ぎが起きた。出動した保安員(警察官)が目の辺りにしたのは異様な光景だった。
現地のデイリーNK内部情報筋によると、中学生5〜6人がアヘンを注射しつつ通りを闊歩していたというのだ。彼らはラリった状態で、通りかかった兵士らに襲いかかり暴行を加えた。保安員の出動後も、彼らは周りの物を破壊するなど乱暴狼藉を働いた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面保安員10数人が追加で出動しようやく彼らを制圧、逮捕した。取り調べで彼らは数回に渡ってアヘンの吸引と注射を繰り返しており、中には中毒との診断を受けた者もいた。
この事件を受けて学校では、アヘンの危険性について教える授業が行われたが、「アヘンは麻薬ではなく治療薬や気分転換のための医薬品という考えを持っている中学生がほとんど」(情報筋)だったという。