超エリートも粛清…金正恩「核ミサイル幹部」が見た天国と地獄

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金正恩総書記の指導の下、北朝鮮で3月18~19日に行われた戦術核による反撃訓練。そこに登場した「モザイク男」がにわかに注目を集めた。

朝鮮中央通信が公開した写真には、訓練を見守る金正恩氏の父娘とともに、4人の将官が写っている。3人は金正植(キム・ジョンシク)党軍需工業部副部長、張昌河(チャン・チャンハ)国防科学院長、強純男(カン・スンナム)国防相とわかるのだが、もうひとり、中将と思しき階級章を付け、マスクとサングラスで顔を隠し、モザイク処理までされた人物の正体が謎なのだ。

多くの専門家が、「核運用部隊の指揮官ではないか」と推測している。確かにそうかもしれない。指揮官の顔が外部に知られれば、部隊の動向を把握する手掛かりになり得るだろう。

一方で筆者は、これは金正恩氏の「イタズラ」だろうとも思う。顔を知られてマズイ人物であれば、そもそも最初から写真に入らないようにすれば良い。それに北朝鮮は、都合の悪い写真の修整を無数にやってきたのだから。

また、こうまでして金正恩氏の身近で随行したからといって、余人をもって代えがたい超重要人物だとも限らない。我々の尺度で重要に見えても、金正恩氏はそうした人物を数多く抹殺してきた。

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それは、金正恩氏の切り札とも言える核開発部門の人材とて例外ではない。

北朝鮮内部の高位情報筋が韓国デイリーNKに伝えたところによると、北朝鮮当局は昨年9月15日、党・政・軍の傘下で核兵器関連業務を担当する機関幹部らを対象に政治学習資料を下達した。

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この政治学習資料には、2021年12月から翌年8月までの間に、「不純な思想」を持った特殊機関の幹部と職員3000人余りが「法的処理」されたという内容が明示されていた。特殊機関には、核ミサイルを運用する戦略軍司令部の要員も含まれていたという。

情報筋は「党的処理や行政的処理ではなく、『法的処理』がなされたというのは管理所(政治犯収容所)に送られたという意味だ」とし、「裁判にかけられたり、教化所(刑務所)に送られたりした場合は『法的処罰』という言葉が使われる。管理所に送られたため『処理』となっているのだ」と説明する。

別の情報筋によると、金正恩氏が軍最高司令官に推戴されてから10周年の2021年12月30日、戦略軍司令部、国防省、総参謀部など軍の主要幹部を集めた特別講演会で「核戦力の法制化が必要だ」と言及があったという。

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その後、軍総政治局と国家保衛省(秘密警察)は幹部たちの間でどのような世論が形成されているかを調査し、私的な席においても核戦力法制化を批判した事実が確認されれば、その幹部をブラックリストに上げて徹底的に監視。最終的に「アウト」と判定された幹部が粛清されたわけだ。

現在の北朝鮮において、核兵器の開発・運用部門の要員はエリートの中のエリートであり、最高の待遇を受けている。そんな彼らが、実在する「地獄の一丁目」とも言われる政治犯収容所に送られたという。彼らが見た「天国と地獄」の落差は、どれほど大きいものなのだろうか。