「ヤクザが襲ってくる」治安悪化で北朝鮮の権力機構が緊張

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深刻な食糧、物資不足の続く北朝鮮では、正確な件数はわからないものの、犯罪が多発している。

先月12日、平安南道(ピョンアンナムド)の順川(スンチョン)駅で、40代男性が若者に集団暴行を受け死亡する事件が起きた。荷物を奪おうと飛びかかった若者らに反撃したため、逆に激しい暴力を振るわれて亡くなってしまった。

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こうした現状に対し、社会安全省(警察庁)は犯罪の取り締まりと処罰を強化するよう指示を下したが、あまり効果は期待されていない。平安南道のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

同省は昨年4月、「全国各地で殺人と強盗、強姦など凶悪犯罪がはびこっており、社会的不安を醸成している」「一部の前科者とヤクザ者が良からぬ考えから党幹部や行政幹部、安全・保衛要員を襲撃して殺人行為に至った」などとして、治安強化を指示する命令文を各地方に伝達した。

これに続き先月10日には、全国の道安全局(県警本部)、市や郡の安全部(警察署)に「最近、隣家とのトラブル、集団暴行、窃盗、強盗が憂慮すべきほど起きている」とし、社会的混乱を招き、民心を不安にさせる犯罪行為に対して取り締まりと処罰を強化せよとの指示文を下した。

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指示を受けた平安南道安全局は先月11日、道内の市や郡の安全部の主要幹部を集めて会議を開いた。その場で安全局長は「社会不安を煽るのは反逆行為」だとして、犯罪を未然に防ぐ対策を立てるよう指示した。北朝鮮で「反逆行為」という言葉は、体制の安定に影響を与えかねない最も重大な事案に対して使われるもので、当局の緊張の表れとも言える。

情報筋によると、極端なゼロコロナ政策による鎖国状態がもたらしたモノ不足と食糧不足で生活が苦しく、他人のものに手を出す人が増えている。

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また、コロナ前なら盗もうとしてバレたらすぐに逃げていたのが、最近では暴力を振るってまで無理やり物を奪い取り、命まで奪う事態も起きている。それで社会安全省が対策に乗り出したというわけだ。

しかし、これは犯罪多発の背景などに関する詳しい調査をするわけではなく、とりあえず「反逆行為」扱いして厳罰化するだけのやり方だ。また、実際に起きた犯罪に対して安全員(警察官)が動くこともなく、防犯対策も立てていない。国民からは怨嗟の声が上がっているという。

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ただ、安全員にも言い分はあるようだ。

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「社会の安全を保証するのが安全員の仕事だが、彼らも生きていくのに精一杯で、犯罪者から袖の下を受け取り見逃している」(情報筋)

かつて、安全員や保衛員(秘密警察)は、北朝鮮の体制を末端で支える重要な役割を担っているとして、食糧事情がどれだけ厳しくても配給が途絶えることはなかった。しかし近年になって、遅配や欠配が増えている。ワイロを受け取り、食べ物を買わなければ彼らとて餓死してしまう。

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情報筋は、犯罪が絶えず発生している一因として安全員の食糧問題にあるとして、彼らのみならず国民全員の食糧問題が解決しない限りは、犯罪など社会秩序を乱す行為はなくならないだろうと締めくくった。

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