北朝鮮「拷問部屋」での50日間…凄惨な結末とその後の波紋

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韓国のソウル中央地検は1月31日、文在寅前政権が2019年に亡命を求めた北朝鮮の漁民の男性2人を板門店(パンムンジョム)から北朝鮮に強制送還した事件を巡り、同政権で青瓦台(旧大統領府)国家安保室長を務めていた鄭義溶(チョン・ウィヨン)氏を出頭させて取り調べを行った。

聯合ニュースによると、検察は「情報機関の国家情報院(国情院)や国防部、統一部など安全保障ラインの司令塔の役割を担っていた鄭氏が、漁民を強制送還する過程全般にわたって違法行為を行ったとみて追及している」という。

北朝鮮の内部情報筋が韓国デイリーNKに伝えたところによると、北朝鮮当局は男性2人の身柄を黄海北道(ファンヘブクト)の沙里院(サリウォン)にある国家保衛省傘下の施設で拘束。情報筋によれば「保衛省は50日間にわたり、拷問を伴う取り調べを行った後、2人を処刑した」という。

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漁民2人は同年11月2日に日本海上で拿捕(だほ)された北朝鮮のイカ釣り漁船の船員で、船内で16人の乗組員を殺害し、逃亡していたものと見られていた。韓国政府が北朝鮮側に2人の追放の意思を伝えたところ、北朝鮮側から引き取るとの返事があったという。

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そして11月7日、韓国政府は2人を、板門店を通じて北朝鮮に追放する形で送還した。2人は韓国に亡命する意思を示していたとされ、事実上の強制送還だった。

問題は、韓国の憲法や各種の法律には、同国に入国した北朝鮮国民を、本人の意思に反して強制的に送還できる規定はないということだ。また、北朝鮮との間に犯罪人の引き渡しに関する取り決めもない。

2人に犯罪の容疑があったならば、十分に時間を割いて、真相を徹底的に究明するのが先決だった。しかし、韓国政府はわずか数日の調査で送還を決めた。この動きの裏に、鄭氏らの違法行為があったと検察は見ているわけだ。

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韓国では昨年まで、文在寅政権下で起きた北朝鮮絡みの問題として、「公務員海上射殺事件」がより注目を集めていた。これは海洋水産部所属の公務員だった男性が2020年9月、北朝鮮に近い韓国北西部の小延坪島付近で漁業指導船乗船中に行方不明となり、翌日、漂流物に乗って海上にいたところ、北朝鮮側海域で北朝鮮軍に射殺されたというものだ。

当時の文政権は男性が自らの意思で北朝鮮に渡ろうとしたと発表した。だが、海洋警察は政権交代後の昨年6月、男性が自らの意思で越境したと断定できる根拠が見つからなかったとして、当時の判断を覆した。

この男性がどうして乗っていた船から姿を消し、漂流物に乗って北朝鮮側に流れて行ったかはいまだに謎だ。

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しかし「越北」と断定する確たる根拠がなかったことが明らかになったことで、遺族は文政権のやり方に猛反発し、世論は遺族に同情を示した。なぜなら、韓国において権力により「自らの意思で越北」と断定されるのは、スパイ判決を受けたも同様であり、本人や家族(遺族)は多大な不利益を被るからだ。

文政権が脱北漁民や公務員男性のケースでこうした行動を取ったのは、北朝鮮に忖度したためだと見る向きが多い。

だが前述したとおり、公務員男性の件は謎が多く、司法が文政権の行動が不適切だったかどうかを判断するのは簡単ではない。その一方で脱北漁民のケースは、憲法や各種法規に対する違反がより明らかだとされている。