北朝鮮の国営朝鮮中央通信は先月16日、最高人民会議の常任委員会常務会議が、複数の法の修正・補足案を審議し、政令を採択したと報じた。この中に「便益サービス法」(朝鮮語の原文では便宜奉仕法)というものがあり、記事は改正内容にも触れている。
人民の生活上の便宜保障と健康保護増進に積極的に寄与するために便益サービス施設の組織と運営、(中略)営業許可申請とサービス業種の変更、違法行為に対する制裁を規制した部分の内容をより具体化した。
便益サービス施設(便宜奉仕施設)とは、理髪店、美容室、写真館、銭湯、レストランなどのレジャー関連の施設を指す。地方都市にある「恩徳院」と呼ばれるスーパー銭湯が典型で、風呂やサウナはもちろん、理髪店や美容室もあり、レストランも併設されている。
こうした施設は、本来は国や地方の機関や企業所、団体のみが道の人民委員会(道庁)から許可を受けて運営できることになっているが、トンジュ(金主、ニューリッチ)が投資して、運営するケースも少なくない。
デイリーNKの北朝鮮内部情報筋によれば、「(当局は)なし崩し的に進んだ個人私有化により崩壊した便宜奉仕部門の統制を正すときだと考えている」のだという。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面そして、当局がこうした判断に至ったきっかけのひとつと考えられるのが、2020年7月に摘発された「女子大生クラブ」事件だ。
現役の大学教授らによる売春組織により、200人もの女子大生が売春させられていたとする事件で、便益サービス施設の代表格である平壌の総合レジャー施設「紋繍院(ムンスウォン)」が舞台となっていた。
金正恩総書記は、自らが目をかける平壌音楽舞踊大学や平壌演劇映画大学の学生たちが売春させられていたと知って激怒。首謀者6人に対する銃殺を自ら指示したと米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は伝えている。
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このような事件を経て、当局が当該施設の運営実態に関心を持たなかったとは考えられない。もちろん、今回の法ができるのに先立ち、相当数の施設に対する検閲(監査)が行われたことだろう。
そしていよいよ新法の施行により、トンジュの金儲けの手段のひとつが消滅するかもしれない。まさに北朝鮮のレジャー業界は、死屍累々の様相と言える。