安倍元総理と金正恩氏が「統一教会」に送ったメッセージの意味

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安倍晋三元総理が山上徹也容疑者に銃撃され殺害された事件を巡り、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)と自民党との関係が、今さらながら注目を集めている。

今さら、と言ったのは、過去にも多くのジャーナリストや報道媒体が、旧統一教会と自民党議員らとの不自然に思える関係を指摘してきたにも関わらず、社会的に広く問題視されることなく「スルー」されてきたためだ。

また旧統一教会は、北朝鮮とも金銭的・ビジネス的に濃い関係を持ってきた団体でもある。教祖の文鮮明氏は、もともと現在の北朝鮮・平安北道(ピョンアンブクト)の生まれだ。社会主義体制の北朝鮮とは、反共団体である国際勝共連合の活動などを通じて長年対立していたが、1991年に電撃的に訪朝。当時の金日成主席と和解して以降、密接な関係を築いてきた。

金日成氏の孫である金正恩総書記も、文氏の命日にメッセージを送っている。2015年8月30日のメッセージで金正恩氏は、次のように述べている。

「世界平和連合の前総裁であった文鮮明先生の死去3年に際して、韓鶴子総裁と遺族に深甚なる哀悼の意を表す。
文鮮明先生は、民族の和解と団結、国の統一と世界平和のために多くの努力を傾けた。
わたしは、韓鶴子総裁と遺族が文鮮明先生の遺志を引き続き継いでいくことを願う。」

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一方、安倍氏は昨年9月12日、韓鶴子氏が創設したNGOである天宙平和連合(UPF)の集会に、こんなビデオメッセージを寄せていた。

「今日に至るまでUPFとともに世界各地の紛争の解決、とりわけ朝鮮半島の平和的統一に向けて努力されてきた韓鶴子総裁をはじめ、皆さまに敬意を表します」

安倍氏の祖父・岸信介元総理が文鮮明氏と親密だったという点においては、金正恩氏と旧統一教会との関係と背景は似通っている。しかし言うまでもなく、金正恩氏と安倍氏の政治的な立場はあまりにも異なる。

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(参考記事:【日韓国交50年】岸信介から安倍晋三まで…首相一族の「在日人脈」と「金脈」

それでいて、両者のメッセージが似通っているのは、どう解釈すればよいのか。

そもそも、対立していた文鮮明氏と金日成氏はどうして接近したのか。それは、ソ連・東欧の社会主義圏崩壊で孤立し、経済的に困窮していた金日成体制が、霊感商法などによる集金力で潤っていた統一教会のマネーパワーに頼り、急場をしのごうとしていたためだと言われる。一方の文鮮明氏は、「その資金力をテコに北朝鮮を抱き込み、いずれは統一朝鮮半島の盟主とならんことを夢見ていた」との解説を聞いたことがある。

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そして現在も、北朝鮮の窮状は変わっておらず、むしろ悪化したとさえ言える。旧統一教会は比べ信者が減り、資金力も当時ほどではないとされるが、金正恩氏としては使えそうなものは何でも利用したいところだろう。そういった意味で、命日のメッセージは当然のものだ。

しかし安倍氏が、日本社会において少なからず問題を起こしてきた旧統一教会系のイベントにメッセージを送った理由はいまひとつ解せない。念のため言い置くなら、筆者はメッセージを送った事実を問題視しているわけではなく、銃撃事件との関連で興味を持っているのでもない。

日本人拉致問題も含め、安倍氏にはやり残した政治課題も多かったと思う。果たして件のメッセージは、それらとの関わりの中で出たものなのだろうか。気になるのはその点だ。