北朝鮮は5日午前9時8分ごろから9時43分ごろにかけて、平壌の順安(スナン)と平安南道(ピョンアンナムド)の价川(ケチョン)、平安北道(ピョンアンブクト)の東倉(トンチャン)、咸鏡南道(ハムギョンブクト)の咸興(ハムン)から短距離弾道ミサイル計8発を発射した。
しかし国営の朝鮮中央通信など北朝鮮メディアは7日になっても、前々日のミサイル発射を報じていない。同国は5月4日以降、5回続けて発射を公開しておらず、情報戦略に変化が生じた可能性がある。
北朝鮮は近年、基本的に、ミサイル発射の翌日に記事や写真を公開してきた。
しかし、かつては兵器開発について徹底した秘密主義を取り、ミサイル発射の事実さえ積極的に公開してこなかった。発射データや写真が迅速に公開されるようになったのは、金正恩総書記が最高指導者となって以降だ。
ウクライナに侵攻したロシア軍の劣勢に精神的ショックでも受けたのか、あるいは中国に対する米国と同盟国の包囲網強化など軍事情勢の変化に緊張を強めているのか、金正恩総書記の情報戦略が「内向き」になり、秘密主義に回帰した可能性もある。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面(参考記事:金正恩氏が自分の“ヘンな写真”をせっせと公開するのはナゼなのか)
金正恩氏が最高指導者となる前、北朝鮮が装備する兵器の種類や性能については、軍事パレードに登場したものの大きさを、周囲の人間の身長や車両の大きさなどと比較しながら測り、分析を行うしかなかった。
北朝鮮は、そのように秘密を小出しにしながら、ミステリアスなベールをまとうことで、情報戦で優位に立とうとしてきたのだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面それが金正恩時代となってからは、新兵器の情報を敢えて公開することで、韓国との軍事バランスに影響を与える戦略にシフトしたのである。
北朝鮮が絶対的な独裁体制であることを踏まえると、こうした変化は、まず間違いなくトップダウンでもたらされたものだと考えられる。仮にメディア戦略担当の幹部が上層部に提案したとしたら、一時的には受け入れられても、その後の情勢変化の中で「スパイ容疑」をかけられて、処刑や追放の憂き目に遭うリスクが高くなるからだ。
そして、最近の「非公開路線」も同様に、金正恩氏の判断によるものだと見ることができる。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面もっとも、北朝鮮が今後もずっと兵器開発での秘密主義を取るとは限らない。判断を下すには、もう少し成り行きを見守る必要がありそうだ。