北朝鮮は、今月12日の国営朝鮮中央通信の報道を通じて、国内での新型コロナウイルス感染者の発生を初めて公式に認めた。だが、実際は先月末ごろから感染を疑わせる患者が発生していたようだ。中国と国境を接する平安北道(ピョンアンブクト)の新義州(シニジュ)では、封鎖令(ロックダウン)が下される事態となっていた。
このことを伝えた現地ののデイリーNK内部情報筋によると、先月末ごろから発熱、咳、下痢などコロナ感染を疑わせる症状を見せる患者が急増。これは、国境の川の対岸にある中国・遼寧省の丹東で感染者が急増したのと、時期を同じくする。
当局は、重症者を隔離施設に移送し、感染を抑え込もうと試みた。しかし、その後も患者の急増は収まらず、今月2日から8日まで、新義州市内がロックダウンに入り、一般市民の私的な移動はもちろん、公用のための移動も制限された。
ロックダウン期間中に、コロナと思しき症状で亡くなる人も出たが、感染拡大が、春窮期と重なったことでさらなる悲劇を生んだ。食糧の蓄えが底をついた「絶糧世帯」の人々は、食べ物を得るための外出すら許されず、餓死していったとのことだ。ただし、餓死者数の正確な数はわかっていない。
(参考記事:【北朝鮮国民インタビュー】突然のロックダウンで生活困窮、餓死者も)症状が出たとしても、申し出ずに隠し通す人も多かったようだ。というのも、隔離施設の環境は極めて劣悪で、食事がまともに提供されず、一度入れば二度と出てこれないとの悪評が広がったためだ。
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別の情報筋は、今月5日から喉の腫れ、発熱、下痢などの症状が出たが、当局には知らせなかったという。
「町内の人で、熱が出たと知らせたら捕まって、まだ戻ってきていない人が多く、怖くて知らせられない」(情報筋)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面国家非常防疫司令部の発表によると、16日18時からの24時間で、新規発熱患者数は23万2880人、4月末からの累積で171万5950人に達したが、情報筋のように隠し通す人も少なからず存在すると思われ、実際の発熱患者の数はさらに多いものと思われる。
(参考記事:「半数以上が死亡している」北朝鮮コロナ隔離施設の知られざる惨状)なお、先月末には、新義州から1000キロ以上離れた咸鏡北道(ハムギョンブクト)鏡城(キョンソン)郡に駐屯する国境警備隊でも発熱患者が急増、部隊ごと隔離される事態となっている。また、両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)でも、発熱患者が続出している。この時期に、国境に接する地域を中心に感染拡大が始まっていた可能性がある。
(参考記事:北朝鮮が震撼「一個中隊200人が壊滅」…中朝国境で厳戒)