ロシアによるウクライナ侵略を巡り、北朝鮮は一貫してロシアを支持している。それは、ロシア軍による民間人虐殺が明らかになった後も揺らいでいない。
たとえば朝鮮中央通信は今月9日、民間人虐殺は、米国と西側諸国による「政治的陰謀」だと非難する論評まで配信した。
「国際問題評論家の金明哲」名義で発表された論評は、「米国と西側諸国がのどがしわがれるほど言い立てている『戦争犯罪行為』は、ロシアの対外的イメージに泥を塗り、ひいては『政権崩壊』を実現してみようとする心理謀略戦の一環として、緻密に計画され、調整された政治的陰謀の所産である」と強弁している。
しかしその実、「金正恩はウクライナでのロシア軍の苦戦を見ながら、深刻なメンタル崩壊に瀕しているはずだ」と、韓国のある北朝鮮ウォッチャーは語る。なぜか。朝鮮人民軍(北朝鮮軍)はほぼ全面的にロシアで開発された兵器を採用しており、軍事理論の面でも、ロシアとの交流から多くを得てきたからだ。
脱北者である東亜日報のチュ・ソンハ記者も、「北朝鮮軍はロシア軍の縮小版だ」としながら、最新のロシア製戦車や装甲車が携帯型対戦車ミサイルで次々に撃破されるのを見て、1960年代に開発されたT-62系列の戦車をなおも使用している北朝鮮の金正恩総書記は、「自国の機械化軍団は、まったく役に立たない屑鉄以下の存在であることに気づかされたはずだ」と指摘している。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面もっとも、そのような軍隊にも使い道がないわけではない。恐怖政治で国民を抑えつけてきた金正恩体制には、いざと言うときに暴徒を鎮圧する軍事力が絶対に必要だ。
(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面)
それがなければ、外国政府による工作で反体制勢力が出現しかねないという恐怖心もあるだろう。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面また、北朝鮮の一般大衆は、海外ニュースの映像や写真を目にする機会がほとんどない。そのため、今まで通り政治的な節目で派手は軍事パレードを開催し、国威発揚を図ることもできるだろう。ただ、国民の多くは、そうした催しに飽き飽きしており、いずれウクライナ戦争の映像が国内に流入することになれば、軍事パレードのたびにシラケたムードが漂うようになるかもしれない。
ロシア軍の苦戦ぶりを目の当たりにした金正恩氏は、通常戦力の更新を放棄し、核戦力の強化にいっそう資源を集中する可能性が高いと言えるだろう。