金正恩だけが“マヌケ”だった…北朝鮮「ある重大事件」のウラ話

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北朝鮮の金正恩総書記は昨年6月29日の朝鮮労働党中央委員会第8期第2回政治局拡大会議で、新型コロナウイルスの流入防止のための防疫対策において、幹部の怠慢により「国家と人民の安全に大きな危機を醸成する重大事件を生じさせた」と明らかにした。

「重大事件」の中身は言及されなかったが、国民への「軍糧米」配給が計画通りに行われなかった件と関連していると見られている。

金正恩氏は上記の拡大会議に先立つ党中央委員会第8期第3回総会で、自身が署名した特別命令書を発した。北朝鮮メディアは特別命令書の内容を明らかにしなかったが、デイリーNKの内部情報筋をはじめ複数の消息筋によれば、食糧難にあえぐ国民に軍糧米を配給するよう命じるものだったとされている。

ところが、いざ軍の倉庫を開けてみると、あると思っていた軍糧米の量が大幅に不足していたという。両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によれば、北朝鮮当局は当時、食料を供給できない理由として「軍糧米が盗まれた」と説明していたとされる。

そして、その内幕が今になって見えてきた。

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平安南道(ピョンアンナムド)の複数の内部情報筋によれば、道当局の検閲団は1月から2月にかけて、道内の糧政機関を一斉に調査。その結果、穀物の脱穀などを担う糧政事業所と軍の後方部が結託し、大量のコメを横領していたことが明らかになったという。

刈り取って収穫した稲穂を干して乾燥させた後、その穂先から「籾(もみ)」を外すのが脱穀だ。糧政事業所に運び込まれた稲穂は、この作業を経て、重量と嵩(かさ)がより少ないコメとなって搬出される。

糧政事業所はこの際、脱穀の作業データを改ざん。脱穀されたコメの量を少なく報告していたという。さらに、軍糧米を受け取りに来る軍後方部が結託することで、改ざんが露見しないようにしたのだ。

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こうした不正が積み重なった結果、軍糧米備蓄の実態が、党の認識と大きくズレていったのだ。

国家の財産を盗んだ上に、最高指導者に恥までかかせた犯罪者たちは、どのように処罰されるのか。金正恩氏なら当然、自ら思いつく最も残酷な方法で死刑にしそうだ。

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ところが情報筋によると、実際にはそうならず、形式的な処罰で終わる可能性もあるという。

汗を流して働いても、まともな給料や配給を期待できないのは、北朝鮮のどの職場も似たりよったりであり、糧政事業所も例外ではない。生きていくためには、職務上の「役得」を最大限、享受せねばならない。これは、もはや北朝鮮の常識だという。

さらに加えて、コメを扱う糧政事業所の幹部らは役得による収入が大きい分、党や行政機関の幹部らの世話を焼くことも多い。そうして構築されたコネが、糧政事業所の幹部を守ることになるというわけだ。

そのような事情を金正恩氏がどれだけ認識しているかは不明だが、本当に形式的な処罰で済むのなら、軍糧米放出などという大見得を切った彼だけが、世間知らずの間抜けになりかねないだろう。