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中国を騒がせる脱獄事件が、罪のない脱北者を苦しめている。

中国環球時報の英語版、グローバル・タイムズは先月19日、吉林省の吉林監獄に収監されていた北朝鮮出身のチュ・ヒョンゴン受刑者が前日午後6時ごろ、ロープを使って壁を乗り越えて脱獄し、逮捕につながる情報を提供した者には報奨金15万元(約269万円)が支払われると報じた。報奨金はのちに50万元(約896万円)に引き上げられた。

米CNNによると、炭鉱労働者だったチュ受刑者は2013年6月21日、北朝鮮から国境を流れる鴨緑江を渡って吉林省図們市の村に忍び込み、複数の民家から現金、携帯電話、スニーカー、衣類を盗んだ。続いて3軒目に入って家にいた女性が助けを求めて叫び声を上げたことから、女性を刺して重傷を負わせた。数時間後に逮捕され、翌年に懲役11年の判決を受けて服役、2度の減刑を経て、2023年8月に出所予定だった。

脱獄のとばっちりを食らったのは、事件とは何の関係もない中国在住の脱北者たちだ。

デイリーNKの現地の情報筋は、公安当局が先月12日から脱北者に対する調査を始めたと伝えた。調査は脱北者の多い吉林省、遼寧省、黒龍江省を中心に行われている。

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遼寧省朝陽市では、公安が農村に人員を派遣して、脱北女性の調査を行っている。戸口(戸籍)の登録をしてやると、未登録の脱北女性をおびき寄せる手法を使っている。朝陽市郊外の農村に住んでいた脱北女性のチェさん(30代)は今月8日、戸口の登録がしてもらえると聞きつけ、地域の派出所に出頭したところ監禁され、中国人の夫と村長が保証金として1万元(約17万9000円)を出してようやく釈放されたとのことだ。

しかし、その後も呼び出されて取り調べを受け、脱獄したチュ受刑者との関係について聞かれたという。

中国東北の農村に暮らす脱北女性は、多くが人身売買の犠牲者で、中国人男性と結婚している。公安当局は彼女らを調査、登録した上で、問題を起こさず平穏に暮らしている限りは滞在を黙認してきた。

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しかし、戸籍がない状態でいつ逮捕、強制送還されるかわからない不安の中で暮らしている。公安の手法は、その不安につけ込んだものだ。

(参考記事:中国公安「在住公認」の脱北女性を次々逮捕で広がる不安

今回の脱獄事件でメンツに傷をつけられた公安当局は、その八つ当たりでもするかのように、脱北女性を締め付けているというのだ。ただし、あくまでも警告に過ぎないというのが、情報筋の見立てだ。

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「中国国内の脱北者は数万から数十万と言われているのに、どうやって全員を取調べて逮捕できるのか。今回の調査は、脱獄した男性の行方を追うと同時に、脱北者に対する警告措置を行っているように見える」(情報筋)

(参考記事:中国政府、脱北女性に「北朝鮮と連絡を取るな」と警告