「魚を獲らせて」懇願する漁民に銃口を向け…問答無用の金正恩命令

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北朝鮮は昨年来、海での漁業を一切禁じている。金正恩総書記が命じたコロナ対策の「超特級非常防疫措置」で、国境のみならず空中、海上からの行き来も一切禁じられているからだ。これは、北朝鮮が海水を通じてコロナが感染すると考えているというよりも、操業の際に密輸が行われ、そこを通じてコロナが流入しかねないと考えているからのようだ。

一昨年までは漁業が盛んに奨励され、その結果として多数の遭難船が日本の沿岸に漂着していたのがまるで嘘のようだ。海の仕事で生きていた漁民たちが、たちまち生活苦に追い込まれたことは言うまでもない。

水産省の下部組織に属する一部の漁民は、一時的にでも操業ができるよう許可してほしいと中央機関に懇願した。しかし、これに対する答えは、少なくとも年末まではコロナ防疫指針により操業の再開は認められないというものだった。

(参考記事:「海水からコロナに感染する?」金正恩の出漁禁止命令に苦しむ漁民たち

そんな状況に耐えかねて、密かに漁を行っていた漁民が逮捕されたと、平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

彼らは今月初め、道内の鉄山(チョルサン)郡の沖合の緩衝地帯が設定されていない海域で密かに漁を行っていた。出漁禁止に伴い、魚が非常に豊富になり、食い詰めた漁民が国境警備隊の監視の目を避けて漁に出た。しかし、監視が強化されていることを軽く見ていたようで、あっけなく摘発されてしまった。

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当局は、今回の事件を非常に深刻に捉えており、逮捕された漁民は極刑を免れないと見られている。

(参考記事:北朝鮮国民が目を背ける「見せしめ射殺体」の衝撃の現場

「国境警備隊で睡眠薬事件があった直後なので、見せしめとして銃殺になる可能性が高い」(情報筋)

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この睡眠薬事件とは、両江道(リャンガンド)の金亨稷(キムヒョンジク)郡で今月1日、一家4人が親しくしていた国境警備隊の隊員に睡眠薬を飲ませて眠らせた上で脱北したというものだ。金正恩総書記は激怒し、捕まえて厳罰にするよう指示を下した。

ところが、それからわずか2週間足らず後の13日、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の会寧(フェリョン)でも、35歳の女性とその家族と幇助した兵士の合わせて5人が脱北する事件も起きた。当局は、度重なる脱北事件の直後に起きた今回の「密漁事件」を、見せしめに利用としようとしているのだ。

(参考記事:金正恩が「見せしめの刑」を命じた「ある一家」の過激な犯罪

そもそもの話、出漁禁止を禁止したのに、生活支援などを一切行わない当局が撒いた種だ。それで銃殺にするとはひどい話だが、そもそも北朝鮮のコロナ対策の主眼は国民の命を守るためではなく、体制を守ることにある。国民の生活苦など眼中にないのだ。

(参考記事:コロナ生活苦に喘ぐ北朝鮮漁民が直訴「海で漁をさせてくれ」