国際社会の制裁、相次ぐ自然災害と対応するインフラの不足、昨年1月からのコロナ鎖国による営農資材の不足など悪材料だらけの北朝鮮農業。そこに、ロジスティクスの抱える問題が加わり、北朝鮮では、1990年代後半の「苦難の行軍」以来の食糧難となっていると伝えられている。
デイリーNKの現地情報筋によれば、食糧が底をついた「絶糧世帯」が各地で続出。平安南道(ピョンアンナムド)の价川(ケチョン)、新陽(シニャン)、陽徳(ヤンドク)などの農村地域では、約3割に達している。
あまりの惨状に、金正恩総書記は軍糧米を放出して配給を行うよう特別命令書を出したと伝えられているが、配給は行われても有償。おりからの経済難でその負担すらできない人が続出している。
また、有償配給は3カ月分が予告されているが、数日分ずつが断続的に行われている。そのことがまた、人々の不安を煽り、「この国にはもう、コメはないのか」との声が上がっていると情報筋は伝えている。
こうした中、各地で窃盗や強盗が多発するなど治安の悪化も伝えられている。そして、当局が目を付けたのは穀物商人だ。
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商人たちの中には、「配給は長続きしない」と見て、商品の売り惜しみをする傾向が見られるという。食糧不足が深刻化して価格が高騰するのを待とうという魂胆だ。
これに対して当局は、食糧を扱う商人専門の取締班「6・17常務」を動員し、監視に当たらせている。この名称の「6・17」は、任務と関連する指示が6月17日に最高指導者から出されたことを意味する。また、「常務」は一種のタスクフォースのことだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面つまり、6・17常務は金正恩氏の命を受けて活動しているのであり、その権限は絶大だ。しかしそれでも、商人たちは巧妙に穀物の隠匿を図っているとのことで、状況の抜本的な改善は見えていないようだ。
北朝鮮は最近、豪雨などにより大きな被害を受けており、これがまた食糧不足に拍車をかける可能性がある。果たして今後、北朝鮮国内で何が起きるのか、特別な関心を持って見守る必要がありそうだ。