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北朝鮮の金正恩総書記は5月5日、李雪主(リ・ソルチュ)夫人と共に、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の各大連合部隊所属の軍人とその家族による軍人家族芸術サークルの公演を鑑賞した。

言うなれば「全国部隊対抗歌合戦」のようなものだが、ただでさえ娯楽の少ない北朝鮮で、参加者たちは大盛りあがりしたに違いないだろう。ただし、金正恩氏の眼前だけあって、羽目を外すことはなかっただろうが。

(参考記事:金正恩氏、軍人家族の芸術公演を鑑賞

派手な公演の裏で、ギリギリと歯ぎしりをしている者がいた。両江道(リャンガンド)に駐屯する国境警備隊の政治部長だ。どんな事情があったのか、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

国境警備隊政治部は公演が行われた後、思想教育が目的の土曜学習会を行った。その場では、金正恩氏が公演の成功を高く評価し、参加者と記念撮影を行ったことが伝えられた。そして、政治部長は他の部隊の軍人家族の芸術サークルのことに言及し、「国境警備隊のどこが劣っていてこんなにダメなのか」などと怒り始めたという。

実は、国境警備隊の軍人家族芸術サークルも今回の公演の予選に参加していた。しかし決勝に残れず、平壌大劇場の舞台に立てなかったことで、政治部長は大層おかんむりだったようだ。

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そして政治部長は、小隊、中隊、大隊の政治、行政、保衛、後方の各部署にいる未婚軍官(将校)にこんな命令を下した。

「未婚の独身軍官(将校)は、歌、踊りなど音楽的才能と器量を持った女性を妻として迎えよ」

敵ではなく、歌合戦で他の部隊を打ち負かすために、結婚相手を選べという驚くべき要求だ。政治部長の事細かい注文はさらに続いた。

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「特出した芸術的技量のない女性を(結婚相手に)選んでは、芸術サークルの公演でトップに登りつめるのは難しい。道、市、郡の芸術団や宣伝隊に在籍して、歌がうまいだけではダメで、身長など外見はもちろん、楽器の一つも演奏できて、話術まで兼備した女性を攻略すべき」

情報筋は言及していないが、軍人家族芸術サークルへの出場も、政治部長や国境警備隊そのものの評価につながるようで、そのために部下の結婚相手の選び方にも口を出しているようだ。

北朝鮮はそもそも、結婚を個人と個人の結合ではなく、革命の最小限の単位として考えており、そのためには個人の幸せなどは二の次だ。望まぬ相手と結婚させられる事例は、今までもあり、女性と栄誉軍人(傷痍軍人)との結婚を強いたこともある。

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(参考記事:「革命の道具」として使われる北朝鮮の女性たち

また、核開発に携わり放射線への被曝により障害を負った男性との結婚を強いた事例もある。当局にとって、女性などは「モノ」に過ぎないのだ。

(参考記事:北朝鮮、女性と核科学者を強制結婚させる