上官に復讐「大事なモノ」をちぎって食らった北朝鮮の女性兵士

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短縮されたとは言え、男性は7〜8年、女性は5年と、世界最長であることには変わりない北朝鮮の兵役。食糧難、上官からの暴言、暴力に苦しめられ、事故も多発する極めて過酷なものだ。

朝鮮人民軍(北朝鮮軍)内部のデイリーNK情報筋は、最近起きた、女性兵士の上官への復讐劇について伝えた。

事件が起きたのは、第2軍団指揮部直属の通信大隊第1中隊坑道戦闘勤務場でのこと。先月22日の午後、業務引き継ぎのときに、無線交信に関する規則が書かれた軍事機密文書「無線諸元」がなくなっていることがわかった。

軍当局は、紛失直前に勤務に当たっていた、18歳女性の下戦士(二等兵)のキム某を呼び出し取り調べを行った。それに対して彼女はこう答えたという。

「文書を細かくちぎって飲み込んだ」

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北朝鮮軍内では、男性の上官による女性兵士への性暴力も頻繁に起きていると伝えられているが、女性兵士の間でも様々な問題があるようだ。ことの顛末は、以下のとおりだ。

前代未聞の事態に、第2軍団の保衛部(秘密警察)4部(捜査担当)が捜査にあたり、キム某に対する追及を強めた。やがて彼女は動機について語り始めた。

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「ペ分隊長に復讐するためにやった」

中士(軍曹に相当)のペ分隊長は、1年半に渡ってキム某に支給されたスキンローション、石鹸、生理用ナプキン、靴、リュックなどの消耗品をすべて奪い、自分の使っていた中古品を押し付けるという行為を行っていたことが判明した。

キム某の私物用のロッカーには、予備の下着すらなく、下着を付けられずに勤務に当たることも頻繁にあったほど、ぺ分隊長の搾取は徹底していた。取り調べのときも、キム某は下着を付けていなかったと伝えられている。

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分隊長は、彼女から奪った消耗品を売りさばき、除隊後の生活資金として貯金していたこともわかった。朝鮮人民軍は、兵役が満了する兵士に対して退職金の類を一切支払わないため、何もしなければ無一文で軍隊から追い出されることになる。当面の生活費や、商売の種銭を貯めるために様々な不正行為を働くが、分隊長が選んだ手法は、部下からの搾取だったというわけだ。

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第2軍団の政治部は、上官と部下が一心同体になり勤務に当たる「上下一致」を阻害したとの理由で、ペ分隊長に対して、降格処分を下した。それも2階級以上の降格で非常に厳しいものだ。

上官による部下への問題行動は、様々な事件を生んでいるだけあり、軍当局は厳しく対処しているようだ。

昨年10月には、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の鐘城(チョンソン)で、国境警備にあたっていた特殊部隊の暴風軍団の兵士が、いじめの常習犯だった副分隊長を自動小銃で射殺し逃走する事件が起きている。

(参考記事:「特殊部隊のいじめ殺人」発生で北朝鮮が厳戒態勢

また、昨年12月には、同じ両江道の金正淑(キムジョンスク)郡の第7軍団の分隊長が、夜間勤務中に武装したまま、中国に逃げ込んだ。また、郡内の上台里(サンデリ)でも別の兵士が武装したまま国境の川を越えて脱北する事件が起きている。いずれも、上官からのワイロの度重なる要求に耐えかねてのことだ。

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一方、被害者のキム某に対しては、個人的な感情による復讐に軍の機密文書を悪用したとして、通信大隊の中隊から、高射銃中隊に異動させるという、比較的軽い処分が軍団の保衛部から下された。また、通常の紛失時には内容の変更が行われる「無線諸元」だが、軍当局はキム某の陳述が真実であると判断し、変更を行わないことにした。

軍団の内部では「幼い兵士が無線諸元を飲み込むなんて、よほど悔しかったのだろう」と同情する声が上がっているとのことだ。