「愛欲生活の奴隷」を支配した北朝鮮青年エリートの腐敗堕落

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非社会主義、反社会主義とは、北朝鮮当局が社会主義にそぐわないと考える行為を指す。具体的には宗教、特にキリスト教の伝道、脱北、密輸、違法通話、海外送金、覚せい剤・麻薬、迷信、投機、高利貸し、韓流ドラマなどの違法なコンテンツの保管や流布、違法な商売、賭博など多岐に渡るが、いずれにも手を出したことがないという北朝鮮国民はほとんど存在しないだろう。

そもそも、取り締まりに当たる側の人間が、権限を利用してそれらの行為を行なっているのだから、いくら取り締まったところで、根絶されるわけがないのだ。だからといって、やりたい放題というわけにはいかない。

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何かに付けて、上部の指示で糾察隊(取り締まり班)を立ち上げて、庶民を痛めつけている社会主義愛国青年同盟(青年同盟)も例外ではない。咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、青年同盟で起きた「事件」について伝えた。

今月5日、朝鮮労働党咸鏡北道委員会、道の安全部(警察本部)、保衛部(秘密警察)、検察所が合同で、大思想闘争会議を開いた。ターゲットとされた人に、問題行動の自己批判を強いた上で、参加者から入れ代わり立ち代わりけちょんけちょんに批判されるという「吊し上げ」大会だ。

今回、その餌食になったのが青年同盟だったのだ。問題とされた行為はこのようなものだった。

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咸鏡北道青年同盟委員会の主要幹部数人は、それぞれ2人または3人の愛人を囲い、その世話を、青年同盟のイルクン(幹部)にさせていた。イルクンらはいずれも、大学の卒業証書を偽造して青年同盟に潜り込んだり、幹部事業(人事)の担当者にワイロを掴ませたりして地位を得た者たちだった。上司に弱みを握られ、奴隷のようにこき使われていたわけだ。

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主要幹部は愛人をはべらせて、韓流映画やドラマを視聴していたという。実は全国の青年同盟のうち、韓流ソフトの流通、違法な中国キャリアの携帯電話の使用、送金ブローカー業、密輸などの違法行為に関わる者が最も多いのが、咸鏡北道の青年同盟であることも、大思想闘争会議で指摘された。今回摘発された主要幹部も、それに関わっていたのだろう。

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韓流をメインターゲットとした「反動的思想・文化排撃法」が昨年12月の最高人民会議常任委員会第14期第12回総会で採択され、取り締まりが行われ、違反者が次々と労働鍛錬隊、教化所(いずれも刑務所)送りにされる中で、咸鏡北道青年同盟のあまりにもひどい堕落ぶりが明らかになった。

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結果としてイルクンの8割以上が解任されることになったが、委員長は例外的に解任されなかった。組織に対する監督不行き届きの責任は大きいが、北朝鮮では社会的地位が高いとされる栄誉軍人(傷痍軍人)で、金日成青年栄誉賞を受賞するなど、比較的「品行方正」な暮らしぶりであるうえに、階級的土台(身分)がいいことも考慮されたという。

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連帯責任が一般的な北朝鮮では異例のことで、「道の青年同盟がこんなことになったのは、責任者の委員長の欠点が大きいのに、処罰されなかったのは運がよい」と言われているという。

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解任、処罰することで最高指導者の権威に傷が付くことを恐れたのか、よほど強力なバックがついているか、真相は不明だ。ちなみに、5月2日の朝鮮労働党機関紙・労働新聞の記事には、咸鏡北道青年同盟の委員長の名前はキム・ソンヒョクとなっている。