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昨年1月からコロナ鎖国に突入した北朝鮮。国境は封鎖され、ごく一部の緊急物資を除き輸出入もできなくなり、密輸の取り締まりも厳格化された。貿易の中国依存度が極度に高いことから、国内での食品、生活必需品などの不足が深刻化し、一部では、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」の再現が囁かれるほどの状況となっている。

困窮に喘いでいるのは一般庶民だけではない。そこそこの暮らしをしてきた貿易関係者も収入が絶たれてしまった。状況打開への希望的観測からか、「貿易がそろそろ再開される」という噂が出ては消え、出ては消えを繰り返している。猫の目のようにコロコロ変わる当局の方針に不信感が高まりつつあると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の情報筋が伝えている。

(参考記事:貿易再開の噂に色めき立つ北朝鮮の密輸業者、一方で不安材料も

平安北道(ピョンアンブクト)の貿易機関の幹部は、RFAの取材に、「旧正月(今月12日)を過ぎて、各貿易機関と外貨稼ぎ会社に対して、コロナで中断した国境貿易が3月中旬以降に再開するので、輸出入する物資を用意せよ」との指示が上部機関からあったと述べた。

ところが各機関、会社の幹部はこの指示に疑いを持ち、上部に「貿易再開は本当なのかハッキリして欲しい」と詰め寄る始末。それもそのはず、同様の指示を下しながら、後に撤回することを何度も繰り返しているからだ。

「コロナ事態後の国境貿易再開に備えよという当局の指示が何度もあったが、手のひら返しを繰り返している当局の言うことを信じられず、貿易会社の幹部は今回の指示にも特に反応を示していない」(幹部)

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この幹部は、平安北道の対岸にある中国・遼寧省の丹東、瀋陽には北朝鮮との貿易を営む業者が集中しているが、以前から新型コロナウイルスの感染者の発生が少なく、実際に貿易が再開される可能性があるとしつつも、今回当局が示した3月中旬以降に感染者が増えれば指示が撤回される可能性もあるため、当局に対して不信感を持つ幹部が多いと説明した。

また、「コロナ事態で悪化しているわが国(北朝鮮)の経済を生き返らせる方法は、中国との貿易を一日も早く再開するしかない」と強調する平安北道の別の情報筋は、このような状況が数ヶ月続けば、市民生活が極度に悪化し、苦難の行軍よりもさらにひどい状況になるかもしれないと懸念を示した。

(参考記事:90年代の大飢饉「苦難の行軍」と似てきた北朝鮮の状況

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特に問題視されているのは、営農資材の不足だ。北朝鮮の肥料生産量は、国内の需要を満たすに至っておらず、堆肥(下肥)で補うなどの対策を取っているが、その効果は化学肥料には比ぶべくもない。また、ビニール膜など作物を遅霜から守る資材も中国からの輸入に頼っており、貿易が再開されなければ、昨年同様に農業生産が低調となり、食糧難が加重しかねない。

(参考記事:一人あたり500キロの人糞集めから始まる北朝鮮の新年

情報筋はまた、「わが国にはコロナ患者が一人もいないと宣伝しているのに、なぜ国境貿易は再開できないのか、矛盾している」と当局のコロナ対策を批判する市民の声も伝えた。

北朝鮮駐在のロシアのマツェゴラ大使は、インターファクス通信とのインタビューで、北朝鮮がロシアを含む外国との境界地点に消毒施設を建設し、間もなく輸入が限定的ながら再開されるとの見通しを示した。また、RFAの別の情報筋は今月10日、消毒設備が中国から輸出され新義州税関に設置されたと伝えている。さらに、平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋は先月、貿易再開の噂があり、ワク(貿易許可証)の割り当ても行われているとも伝えた。

(参考記事:北朝鮮の輸入品消毒施設が完成間近、貿易を一部再開か