朝鮮総連が「復権」か…党規約改正、金正恩のねらいは

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北朝鮮の平壌で5日から行われている朝鮮労働党第8回大会で9日、同党規約の改正が討議・決定された。

朝鮮中央通信によれば、改正された党規約は序文に、「海外同胞の民主的民族権利と利益を擁護、保障し、海外同胞を愛国・愛族の旗印の下に固く結束させ、民族的自尊心と愛国的熱意を呼び起こすことに関する内容」が新たに盛り込まれたという。

在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の活動や日朝関係に、こうした内容がどのように影響するか注目される。北朝鮮の最も組織化された在外公民団体は朝鮮総連だ。改正された党規約に従い、朝鮮総連の役割が重視されるようになれば、日朝関係に影響が出る可能性もある。朝鮮総連は近年、日朝間の「パイプ役」としての役割が低下していた。北朝鮮が朝鮮総連をより重視するようになれば、パイプ役の機能も復活するかもしれない。

今回、党委員長から総書記となった金正恩氏は祖父・金日成主席や父・金正日総書記と比べ、朝鮮総連の活動に関心が薄いと見られてきた。金正恩氏は折に触れて、朝鮮総連中央常任委員会や許宗萬(ホ・ジョンマン)議長に宛てて祝賀文やメッセージを送ってきたが、その内容も金正日氏の時代に比べ「薄い」と言われている。実際、金正恩氏は最高指導者になって以降、許宗萬氏と一度も会っていないと見られている。

理由はいくつか考えられる。ひとつは、旧朝銀系信用組合の経営破たんにより、朝鮮総連の送金能力が落ちたこと。次に、拉致問題の解決が難しいため、日朝国交正常化の展望が開けないこと。そして、日朝関係の停滞が長引く間に、朝鮮総連や日本の実情に詳しい幹部が引退もしくは鬼籍に入り、金正恩氏に具体的な助言のできる人材がいなくなったことだ。

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日朝間では日本政府の独自制裁により、2006年に北朝鮮からの輸入が、2009年に北朝鮮への輸出が全面停止になった。かつてマツタケや海産物の取引で利益を上げていた在日の貿易業者も、今では廃業したか、中国などとの貿易にシフトしている。新潟と元山(ウォンサン)の間を往来していた万景峰(マンギョンボン)号の運行が止まってからも随分経つ。朝鮮総連幹部など在日の人々の往来も規制されている。

ちなみに、こうした現状を最も嘆いているのは日本の公安当局かもしれない。今や日本国内では、北朝鮮の情報をまったく取ることができないのだ。

(参考記事:【対北情報戦の内幕】あるエリート公安調査官の栄光と挫折

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これらの措置は北朝鮮の核・ミサイル実験に圧力を加えるために必要なものだが、日本と関わる「うま味」が消滅した現状で、積極的に対日部門に関与しようとする有力者はいないと思われる。

そのような状況で何故、朝鮮労働党の規約に前述の内容が盛り込まれたのか。金正恩氏のねらいは何か。真意の見極めには時間がかかるが、もしかすると、拉致問題解決に向けた対話につながる糸口が、ここに隠れているかもしれない。