国連安全保障理事会は今月11日、北朝鮮の人権状況について非公開会合で討議。参加国に日本を加えた8カ国で、北朝鮮の自国民に対する人権侵害を非難する声明を発表した。
安保理では米国の主導により、2014年から毎年12月に北朝鮮の人権問題が話し合われてきたが、2018年には賛成国が足りず会合を開けなかった。昨年も会合は開かれず、今年も中国とロシアが反対。米国などは公開会合を断念し、ベルギー、ドミニカ、エストニア、フランス、ドイツ、英国が参加して非公開会合が行われた。
共同通信によれば、声明は北朝鮮が世界的な新型コロナウイルス流行を「自国民への締め付けを強めるために利用している」と非難。新型コロナに関し北朝鮮で処刑が増加していることや、厳しい移動制限を設けていることに憂慮を表明した。
本欄でも繰り返し指摘してきたが、北朝鮮国内からは防疫対策の違反者や、治安を乱した者が処刑されたり、軍によって射殺されたりしたとの情報が少なからず漏れ伝わっている。
たとえば8月には、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の茂山(ムサン)に住んでいた34歳の既婚女性、キムさんが射殺される事件が起きた。彼女は、過去数年に渡って保衛部(秘密警察)の情報員、つまりスパイとして活動してきた。しかし、それは自ら望んだものではなく、生きるため密輸に加担していた事実を反探課所属の保衛員につかまれ、「言うことを聞かなければ監獄送りにする」と脅されていたためだった。さらにキムさんは、保衛員により頻繁に呼び出され、性暴力を受けていた。
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繰り返される性暴力に耐えかねたキムさんはついに7月10日の午後11時ごろ、脱北を図った。かばん2つを背負って豆満江に飛び込んだが、10メートルほど泳いだところで国境警備隊に発見され銃撃を受けた。キムさんは翌日、遺体となって発見された。
横暴な権力にすべてを踏みにじられ、挙句に射殺された彼女の無念はいかばかりだろうか。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面国境警備隊は、コロナ対策の国境封鎖を徹底するため、国境付近で動くものを見つけたら躊躇せず発砲するよう命令されている。それがなければ、キムさんは拘束されても、死なずに済んだかもしれない。
年が変われば、米国でバイデン次期政権が発足する。人権に無頓着だったトランプ米大統領とは異なり、バイデン次期大統領は外交においても人権を重視すると見られている。コロナ禍の下、人権侵害が拡大した可能性のある北朝鮮は、これまでの4年間とは違った困難を、外交戦略において強いられるかもしれない。