韓国の文在寅大統領の支持率下落が止まらない。同国の世論調査会社・リアルメーターが14日に発表した文在寅氏の支持率は前週より0.7%低い36.7%だった。就任後最低の数字である。「岩盤」と言われた支持率40%を割り、2週連続で30%台に落ち込んだ。
新型コロナウイルス感染再拡大や住宅価格の高騰と並び、支持率下落の要因のひとつとなっているのが、秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官と尹錫悦(ユン・ソギョル)検事総長の対立だ。
この対立について、日本の一部メディアは「絶大な権限で時の政権を揺さぶる検察の力をそぐ検察改革では尹錫悦検事総長が抵抗し、政権との対立が泥沼化。尹氏を検事総長として初の懲戒委員会に追い込んだが、政権の強行突破に世論は反発した」などと解説しているが、これはいささか実態から外れている。
文在寅政権が尹錫悦氏への攻撃を強めているのは、尹氏が政権高官や与党関係者の疑惑に対して容赦ない捜査を進めてきたからだ。秋美愛氏は、いわば尹氏を追い落とすための「刺客」であり、政権がやっていることは改革ではなく捜査妨害だ。そして多くの韓国国民は、そのことを見抜いている。
政権や与党関係者の関与が疑われている事件のひとつに、ライム資産運用とオプティマス資産運用という2つの私募ファンドによる金融詐欺事件がある。被害規模2000億円以上とも言われる両事件では、老後資金を託した庶民らが血の涙を流したのに、捜査は遅々として進んでいない。秋美愛氏が、担当検事たちを左遷してしまったからだ。
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そしてさらに問題なのは、責任者への処罰や再発防止策が徹底されない間に、金融市場ではさらに恐ろしい事態が進行している可能性があることだ。韓国の月刊誌『新東亜』12月号によれば、韓国では文在寅政権の発足後に361もの私募ファンドが償還中止に至っており、被害規模は6兆ウォン以上になるという。同誌は「償還中止は、事実上の破産だ」としている。
(参考記事:文在寅政権下で増幅する韓国「金融危機」の現実的リスク)ちなみに私募ファンドは、数々の疑惑で起訴されたチョ・グク前法相ファミリーが財テクのために用いた仕組みでもある。
韓国国民はまだ、こうした数字を把握して文在寅政権を批判しているわけではないだろう。だが、政権と検察の対立の背景を伝える報道を追っていれば、議会で圧倒的多数派となり、独裁的に振舞う与党や政権の下で、どのような腐食が進行しているかを感じ取れるはずだ。
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そして、国民の不信が頂点に達した時、政権が手痛いしっぺ返しを食うのは、韓国の歴史が証明している。私募ファンドの大量破たんは、韓国経済にとってだけでなく、文在寅政権にとってもまた、深刻な「危険信号」と言えるかもしれない。