金正恩「女子大生クラブ」メンバー処刑の致命的な失敗

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国連総会第3委員会(人権)は18日、北朝鮮の人権侵害を非難する決議案を議場の総意(コンセンサス方式)により無投票で採択した。同趣旨の決議採択は16年連続である。

また、決議案では人権侵害を国際刑事裁判所(ICC)に付託し、「最も責任ある者に対する追加制裁の考慮」など適切な措置などを取るよう勧告がなされている。絶対的な独裁体制を敷く北朝鮮で「最も責任ある者」と言えば、金正恩党委員長を置いてほかにいない。ICCへの付託と責任者の処罰の勧告は7年連続だ。

この7年の間に、米国では民主党のオバマ政権から共和党のトランプ政権に交代し、さらにまた、民主党のバイデン次期政権に移行しようとしている。この期間に、人権状況の意味ある改善を国際社会にアピールできなかった金正恩氏の損失は大きい。

それどころか、北朝鮮ではなおも深刻な人権侵害が進行している。今年7月、北朝鮮当局は大規模な売春組織、いわゆる「女子大生クラブ」の運営メンバー6人を公開処刑した。

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北朝鮮で売春は違法だ。しかし、違反者が死刑になり得るという定めはない。行政罰を定めた行政処罰法220条「売淫行為」で、「売淫行為を行ったり、それを助長、仲介、場所を提供した者には罰金または3ヶ月以下の労働教養処分とする」としているのみだ。

つまりは件の6人は、超法規的に処刑された可能性が高いのだ。これは深刻な人権侵害である。それも金正恩氏が、自分が大事にしている平壌音楽舞踊大学、平壌演劇映画大学の学生が売春に加担したことに激怒、組織の主要メンバーらの銃殺を指示したためだとの情報がある。

もちろんこうした情報は、検証すべき余地が大きいものだ。ただ、仮に北朝鮮が非核化に動くなどして、国際社会との交流が拡大する運びになれば、様々な形で、この間に北朝鮮国内で起きたことの事実関係が外部に漏れ伝わる。そこで、金正恩氏が意のままに国民の生命を奪う独裁者であるとの印象が強まれば、北朝鮮と国際社会との交流は足踏みする可能性が高い。これは、金正恩体制の未来にとって致命的だ。

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果たして金正恩氏は、そのような未来について考えを巡らせたことはないのだろうか。

韓国のNGO、北朝鮮人権情報センター(NKDB)は9月に発表した「2020北朝鮮人権白書」で、「金正恩時代になり、北に送り返された脱北者に対する処罰が強化されるなど、社会全般にわたって処罰強度が高くなった」とする一方、いくつかの分野では過去と比較して、人権状況に改善が見られることも明らかにした。

白書は「2000年代以降、北朝鮮の住民の生存権、教育権、健康権が改善されている」としながら、「これは経済・社会・文化的権利に関する規約(国際人権A規約)の分野でかなりの改善が進んでいることを示している」と評価している。

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筆者も、金正恩氏に国民の人権状況を改善する意思があるのだと信じたい。しかし彼の行動は、国際社会にそれを信じさせるのとは程遠いものだと言わざるを得ない。