漂流船に残された「耳」と血痕…北朝鮮軍「海賊行為」の生々しい証言

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韓国の海洋水産省所属の漁業指導船に乗り組んでいた男性が24日、北朝鮮軍に銃撃され死亡した事件で、北朝鮮の金正恩党委員長は謝罪の意を表明した。

軍事的緊張状態が続くこの海域では、1999年6月と2002年6月の韓国軍と北朝鮮軍の交戦、2010年3月の韓国の哨戒艦撃沈、同年11月の韓国領の大延坪島(テヨンピョンド)砲撃など、衝突が繰り返されてきた。

一方、北朝鮮北部の中国との国境エリアでも、血なまぐさい事件が起きている。

飢えや経済的困窮のあまり、以前から国境地帯で乱暴狼藉を働いてきた北朝鮮の兵士たちだが、コロナのせいで以前にもまして生活が行き詰まり、中国漁船までをも襲撃しているもようで、中国人は「海賊」と呼んで恐れている。中国のデイリーNK情報筋が語ったのは、こんな身の毛もよだつ話だ。

残忍な公開処刑

「6月に(鴨緑江河口の)丹東沖で漂流していた無人の漁船1隻が発見されたが、船内には人の耳と思しき肉片と血痕が残っていたらしい。中国政府が調査に乗り出し、聞き込みを行った結果、朝鮮の海岸警備隊の仕業とわかったが、解決するすべがなく結局あいまいに終わってしまった」

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北朝鮮沿岸では以前から、こうした海賊行為がたびたび報告されている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は昨年7月、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋の話として、現地で強盗殺人を犯した6人に対する公開裁判が行われたと伝えた。

6人は、最初から強盗目的で海に出て、陸地から遠く離れた海上で小さな漁船を襲い、漁獲物、燃料、食品を奪い、証拠隠滅のために襲った漁船の漁師を殺害したという。さらにはエンジンまで奪って、あたかも船が漂流した末に漁師が亡くなったかのように偽装した。6人には数十件の余罪があったという。まさに現代の「海賊」と言える。

目撃者のいない海上での完全犯罪のはずだったが、死んだはずの漁師が生きていて、自力で港に戻り通報したことから事件が発覚。司法当局が犯人の自宅を捜索した結果、15機のエンジンと犯行に使われた凶器が発見された。

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6人は、残忍な方法で公開処刑されたと伝えられる。

(参考記事:「死刑囚は体が半分なくなった」北朝鮮、公開処刑の生々しい実態

鴨緑江河口での事件を受け、さすがに座視できないと思ったようで、最近になって両国は再発防止策について合意した。別の中国の外交筋は、中国側が自国民保護のため交渉を呼びかけ、今月10日に合意に達したと明らかにした。

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北朝鮮側は、違法操業の漁船を見つけても銃撃は行わず口頭や石を投げたりして警告を発し、追い払うものとし、もし中国人に対して無差別、無分別に銃撃して人的被害が発生した場合、北朝鮮から輸入する商品の関税を3倍にする、被害者には120万元(約1855万円)の賠償金を支払うというものだ。

合意に基づき、北朝鮮の警備艇は男性の拳ほどの大きさの石を大量に積んで出港するようになった。この合意は、中朝国境全体に適用されているようだ。今月21日、中国吉林省の長白朝鮮族自治県で、中国人男性2人が牛に水を飲ませようと国境を流れる鴨緑江の河原に降りた。

北朝鮮は中国に対し、国境に人を近づけるな、違反者は銃撃するとの警告文を発し、実際に違反者を射殺している。ところが今回は、「帰れ」と口頭で警告するだけだった。

北朝鮮のこうした中国への妥協とも言える姿勢と、金正恩氏の韓国に対する謝罪表明は、北朝鮮が対外的に、一定範囲での柔軟姿勢に出てきた兆候のようにも見える。

だが実際のところ、北朝鮮の両国に見せた姿勢には、それぞれ異なる背景があると見るべきだろう。経済制裁や新型コロナウイルス対策での国境封鎖で経済難が深刻の度を増している北朝鮮は、中国の経済支援に頼らざるを得ない。違法操業取り締まりでの譲歩は、中国という国家に対する協調姿勢だ。

一方、韓国への謝罪は、韓国国民の対北感情を必要以上に悪化させない方が、今後の対南戦略で有利だと読んだうえでの世論対策であり、文在寅政権へ配慮ではない。北朝鮮はいずれ機を捉えて、文在寅政権に対する強硬姿勢に戻ると思われる。