文在寅氏が目を背ける、金正恩式「公開処刑」の不都合な真実

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韓国のNGO、北朝鮮人権情報センター(NKDB)は16日に発表した「2020北朝鮮人権白書」で、「金正恩時代になり、北に送り返された脱北者に対する処罰が強化されるなど、社会全般にわたって処罰強度が高くなった」とし、「そのため拘禁施設内の環境が劣悪になった」との分析を示した。

NKDBは傘下の北朝鮮人権記録保存所が、2007年から毎年白書を発表している。

今回の白書は「(金正恩政権が誕生した)2010年代は、2000年代に比べて生命権、被疑者と拘禁者の権利、労働権、財産権侵害のレベルが相対的に高く、多く発生した」とし指摘。さらに、「特に政権安定、社会秩序と治安維持のための非公開処刑などの割合が増加し、生命権侵害が大幅に増えた」としている。

一方、ここでは言及されていないが、金正恩時代になり公開処刑の残虐性が増したのも事実である。大口径の4連高射銃を使用するなど「金正恩式」とも言えるその手法は、衛星写真などを通じて実態が把握されている。

(参考記事:女性芸能人たちを「失禁」させた金正恩の残酷ショー

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韓国の文在寅政権は、朝鮮半島の平和統一を目指しているわけだが、その途上において北朝鮮の人権状況の改善を避けて通ることはできない。北朝鮮の人権状況を韓国と同じ水準に持ち上げることなしに、両国民の幅広い交流と融和は望めないからだ。

だからこそ、北朝鮮の人権状況を継続的に把握し、記録し続けることには大きな意味がある。

ところが文在寅政権は、人権侵害に対する追及を嫌う金正恩氏に気を使い、この問題から目を背けようとしている。

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NKDBは16日の記者会見で白書を発表するとともに、韓国統一省による「調査妨害」とも言えるような行為を告発した。

NKDBの白書は従来、脱北し韓国に入国してから日の浅い脱北者たちからの聞き取り調査をベースに、北朝鮮の人権状況に関する情報を更新してきた。そのためには統一省が管轄する脱北者の定着施設「ハナ院」の協力が欠かせない。

ところが今年、統一省はNKDBに対し、ハナ院入所者に対する聞き取り調査を不許可とする旨を通知したという。統一省はまず、韓国に入国する脱北者の数が減っていることや、同省傘下の北朝鮮人権記録センターと調査が重複することなどを理由に、NKDBに対して調査対象の人数削減を要求。NKDBが苦慮の末に承諾したにもかかわらず、「期限内に回答がなかった」として不許可を決めたという。しかしNKDBによれば、統一省との間ではいかなる期限も定められていなかった。

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そもそも同センターは、北朝鮮人権法に基づき2016年9月に設置されながら、見るべき活動を行ってこなかった。聯合ニュースによれば、2017年から20年まで、情報システム運営費を除いても計36億7000万ウォン(約3億2800万円)の予算を割り振られながら、白書の類をひとつも発表しておらず、野党を中心に怠慢を批判されてきたのだ。

かと思えば、聯合ニュース17日、「センターが年内を目標に、北朝鮮の人権状況の実態を記録した外部公開用の報告書を刊行すると伝えた。記事によれば、統一省の当局者は聯合ニュースの電話取材に、「直前年度の19年の調査結果だけを盛り込むか、センターが調査を開始した17年以降の調査結果をまとめた報告書にするか、話し合っているところだ」と述べたという。

年内の刊行を目指していながら、今になってそんなことを話し合っているとは。前日のNKDBの告発を受けて、アリバイ的に作ろうとしているのは明らかだ。

と、思ったら、聯合の取材に応じた統一省当局者は翌日、「年内の報告書刊行は決まっていない」と前言を翻した。アリバイ的な報告書発表すらも、統一省上層部は許可しなかったと見られる。

統一省がNKDBを排除しようとするのは、金正恩氏を刺激しないよう、北朝鮮の人権情報を政府がコントロールするためだろう。忖度も極まれりと言うしかない。

だがそんなことをしてもムダだろう。仮に文在寅政権による対北融和が進むとしても、南北が近くなればなったで、北朝鮮から韓国への情報流入も増える。今は無関心な多くの韓国国民も、そうした問題に目を向けるようになるかもしれない。

そのとき、韓国の政権が金正恩体制の「共犯者」として指弾されるならば、南北融和はそこで停滞してしまう可能性が高い。韓国政府が覆い隠そうとすればするほど、北朝鮮の人権侵害は平和統一の「不都合な真実」として、暗黒の度を増して行くのだ。