北朝鮮10代少年らを破滅させた「妻の誘惑」と金正恩の仕打ち

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北朝鮮の地方都市で14歳から15歳の少年ら30人が逮捕され、全員に労働教科刑(懲役刑)判決が下される事件があったと、韓国紙・東亜日報記者のチュ・ソンハ氏が自信のブログとユーチューブ・チャンネルで伝えている。

脱北者出身のチュ氏が独自のルートで入手したとする情報によると、少年らは韓流ドラマ「妻の誘惑」のビデオを隠れて視聴していたことがバレたのだという。

韓国で2009年に放送されたこのドラマは、最高視聴率40.6%を記録。日本でもBS朝日が放送したので、見たことのある読者も少なからずいるかもしれない。BS朝日のホームページによれば、そのストーリーは「夫の裏切りと陰謀により死にかけた妻は、魔性の女としてよみがえり、今度は、元夫を誘惑し返し、新しい家庭を崩壊させていく」というものだ。

決して体制を脅かす類のものではないが、それでも韓流ドラマを隠れて視聴したことがバレれば、北朝鮮ではきわめて過酷な仕打ちを受ける。

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チュ氏によれば、事件の舞台になったのは中国との国境都市・新義州(シニジュ)にある白砂(ペクサ)高級中学校(高校)である。同校は、全国に名の知れた英才高だという。

この学校に8月、韓流摘発を専門とするタスクフォース「109常務」の調査の手が伸びた。その結果、少年らが全130話のドラマをすべて、携帯電話で回し見していたことが発覚した。

前述したとおり、少年らは丸刈りにされた上で有罪判決を受け、親たちも都市から追放され農場や炭鉱送りとなった。それだけではない。少年らに動画ファイルを渡した卒業生たちも、職場や軍を辞めさせられ監獄に送られた。学校も連帯責任を問われ、校長と副校長、担任教師たちが懲役刑を言い渡されたという。

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それにしても、韓国で10年以上も前に放送されたドラマが、なぜ今になった北朝鮮の少年たちの間で流行ったのか。チュ・ソンハ氏は「大人たちは皆が見たので、子どもたちが見る番になったのだろう」と分析する。

同氏はまた、北朝鮮の強力な新型コロナウイルス対策が、事件を誘発した可能性も指摘する。休校が長く続き、自由に外出することも出来なかったために、少年たちも韓流ドラマを見るぐらいしかすることがなかったのだろう。

それにしても、他愛ないドラマひとつ見ただけで30人もの少年とその関係者を破滅させるとは、いつもながらやり過ぎである。金正恩党委員長は最近、台風の被災地を精力的に視察して自身の「人民愛」を強調しているが、少なくない北朝鮮国民にとっては彼の存在自体が災厄なのである。