北朝鮮が、警察庁に相当する人民保安省の名称を「社会安全省」に変更したことが3日、同国メディアの報道を通じて確認された。
北朝鮮メディアが人民保安省の名称に言及したのは5月24日、朝鮮労働党中央軍事委員会拡大会議の開催を伝える報道が最後だから、同会議の結果、組織名が変更されたとみられる。
同省は、1951年に内務省から独立して発足。当時の名称も社会安全省だった。その後、「社会安全部」「人民保安省」「人民保安部」などと改称を繰り返してきた。2016年、国防委員会の廃止に伴って金正恩氏が委員長を務める国務委員会の直属となった。
一方、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は2日、平壌在住の消息筋の話として、名称変更とともに「社会安全省の組織改編が進行中で、部署によって組織や人員が拡大したり、縮小したりする見込みだ」と伝えた。名称変更の理由や組織改編の内容は詳らかでないが、背景にはどうやら、金正恩氏の同省に対する不満があるらしい。消息筋はRFAに、次のように語っている。
「最高尊厳(金正恩氏)が主宰した党中央軍事委員会では、人民保安省の事業成果が厳格に検討された。これまで、人民保安省幹部らの権力乱用や官僚主義により、人民の支えとしての役割をまともに果たせてこなかったと追及されたのだ」
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面実際、北朝鮮における保安員(警察官)の評判は、きわめて悪い。
保安員は取り締まりの権限を振りかざし、庶民からワイロを搾り取ることを半ば生業としている。要求に応じなければ様々な言いがかりをつけて逮捕し、刑務所送りにすることもある。また、同様のやり方で女性に性行為を強要することもあり、悪徳保安員に対する庶民の恨みは深い。
(参考記事:手錠をはめた女性の口にボロ布を詰め…金正恩「拷問部隊」の鬼畜行為)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面国際人権NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が2018年10月31日に発表した報告書「理由もなく夜に涙が出る 北朝鮮での性暴力の実情」は、金正恩党委員長が政権を継承した2011年以降に脱北した54人と、脱北した北朝鮮の元公務員8人を対象にしたインタビューを元に作成されたものだ。
その中には、被害女性らの血のにじむような証言のほか、身近で起きた性犯罪の経過を知る第三者の証言などが数多く収められており、読むほどに「そこまで酷いのか」と愕然とさせられる。その中には、警察官が加害者となった性犯罪の事例が多数、収められている。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)の消息筋が韓国のリバティ・コリア・ポスト(LKP)に語ったところによれば、2018年末までの1年間で、全国で起きた保安員に対する報復殺人は70件を超えたという。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面これでは体制を守るどころか、むしろ体制の不安定要因にもなりかねず、金正恩氏が不満を募らせていたとしても不思議はない。金正恩氏にはこの際、公正な警察の存在こそが社会を安定させ、国を発展に導くということをしっかり学んでもらいたいものだ。