「金正恩独裁」に挑戦した強盗団の親分は現職の検事だった

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北朝鮮の北東部、咸鏡南道(ハムギョンナムド)の咸興(ハムン)市で今月5日、強盗団の頭目とメンバーら6人に対する公開裁判が行われた。強盗団を率いていたのはなんと現職の検事であり、見守る人々を驚愕させたという。

デイリーNKの現地情報筋によると、検事は50代前半の男性で、ほかの5人の男性と「義兄弟」の関係を結び、過去2年間、様々な犯罪に手を染めていたという。

彼らは闇夜に紛れ、刃物を突き付けて通行人から金品を強奪する一方、違法薬物の密造・密売なども行っていた。検事は、仲間の行為が発覚しそうになると、同僚の検事やほかの機関の幹部にワイロを渡し、事件を闇に葬る役割も担っていた。

公開裁判は、市内の沙浦(サポ)区域にあるヨンデ橋の下の空き地で行われた。ここは過去、多数の裁判と公開処刑が行われてきた場所であり、見守る誰もが重刑を予想していたという。

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そしてその通り、彼は管理所(政治犯収容所)での無期懲役刑を言い渡され、裁判が終わるや即時、家族とともに移送された。

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北朝鮮にも、昔から「アウトロー」はいる。いくら思想統制を強めても、人間の心の奥底で芽生える反抗心を根絶やしにはできないのだ。

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しかし多くの場合、アウトローはコチェビ(ストリートチルドレン)や下層の労働者出身のはずで、今回のようなエリートが暴力的な犯罪組織を率いていた例は珍しいのではないだろうか。

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そして、検事が政治犯として処罰されたのは、単に凶悪犯罪に手を染めただけではなく、「党の唯一的領導体系確立の十大原則」(十大原則)に違反したからだというのが、現地情報筋の説明だ。

十大原則とは、最高指導者の地位と権威を絶対化するもので、北朝鮮において憲法よりも上位にある「最強の掟」と言える。つまり、金正恩党委員長の独裁者としての地位と権力は、これを基盤にしていると言うこともできるのだ。

十大原則の中には、次のような条文がある。

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「個別の幹部たちに対する幻想、おもねり、偶像化を排撃し、個別幹部たちの職権に押され盲従盲動したり、非原則的に行動したりする現象を徹底的になくさなければならない」

強盗団が検事をリーダーとし、義兄弟となって徒党を組んだ事実が、この原則に違反したものとみなされたわけだ。

言うまでもなく、強盗団は金正恩氏の独裁権力に挑戦する目的から結成されたものではない。たとえそうであっても、北朝鮮においては特定のリーダーに従ったというだけで、金正恩氏の権力に挑戦したものと見なされ、根絶やしにされるのである。