北朝鮮でまた「見せしめ」処刑…金正恩の「延命」妨げた罪

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国際社会の経済制裁に新型コロナウイルスの追い打ちがかかり、いよいよ財政のひっ迫した北朝鮮は先月、17年ぶりの公債発行に踏み切った。

デイリーNKの内部情報筋によると、金正恩党委員長は先月11日、党中央委員会政治局会議で公債の発行を承認した。発行を担当する内閣委員会は、急ぎ印刷を済ませ、15日の太陽節(金日成主席の生誕記念日)に朝鮮中央銀行に輸送した。

そして国の資金供給を受けている工場、企業所などに対し、20日から現金の代わりに公債を受け取るよう指示が下された。資材調達のための企業間の決済は、現金ではなく公債で行なえということだ。さらに、発行された公債の4割は、個人を対象に外貨で販売される。

これに対して、国民は強く反発している。

公債は、発行体の信用そのものと言える。決められた期限にきちんと償還されると信じられてこそ、人々は公債を購入する。

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ところが、北朝鮮の人々は国家をまったく信用していない。17年前に半強制的に買わされた公債が、償還されずに大損した人も少なくないし、そもそも公債どころか自国の貨幣すら信用していない。2009年の貨幣改革(デノミネーション)の際、新紙幣と旧紙幣の交換に条件を設けたせいで、多くの国民が財産を失い、経済が大混乱に陥ったためだ。

それでも北朝鮮国民には、公債を買わないという選択肢はないようだ。

デイリーNKの別の情報筋によると、首都・平壌郊外の江東(カンドン)地区炭鉱連合企業所に投資するトンジュ(金主、新興富裕層)が今月6日、秘密警察である国家保衛省によって処刑された。

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企業所を通じて公債を買うよう要求されたのに、「ぜったい買わない」と公言したことが罪に問われ、ほかのトンジュが追随しないよう「見せしめ」として殺されたのだ。見せしめのための処刑は、北朝鮮の常とう手段である。

その効果はてきめんだったようで、ほかのトンジュたちは「公債を買わなくては」と口々に語っているという。何事も、命あっての物種だ。

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だが、それで当面の命をつなぐことが出来ても、将来どのような「後遺症」に悩まされるかはわからない。新型コロナウイルスの感染が沈静化したとしても、核兵器開発に対する国際社会の経済制裁が解除されない限り、北朝鮮経済が大きく上向くとは考えられず、したがって公債の償還も行われない可能性が高い。

そうなれば、多くのトンジュが深刻なダメージを受け、北朝鮮経済はいよいよ「底」が抜けることになりかねない。公債の押し売りで「今だけの」命をつなぐことが出来るのは、金正恩体制も同じなのかもしれない。