北朝鮮の金正恩党委員長が22日、シリア・アラブ共和国のバッシャール・アサド大統領が金日成主席の生誕記念日である「太陽節」(4月15日)に際して祝電を寄せたことを受け、答電を送った。朝鮮中央通信が伝えた。
イスラエル軍と死闘
金正恩氏を巡っては、米CNNの報道をきっかけに重体説が取り沙汰されている。最高指導者となって以降、15日の太陽節当日に欠かさず参拝してきた錦繍山(クムスサン)太陽宮殿を、今回は参拝した様子がうかがえないことがこうした見方を補強している。
しかし朝鮮中央通信の報道によれば、金正恩氏は15日以降、シリア、ジンバブエ、キューバの首脳にメッセージを送っている。特にシリアのアサド氏に対しては、17日に独立74周年の祝電を送ったのに続き2本目だ。
シリアのアサド政権と北朝鮮の金正恩体制は、きわめて強い絆で結ばれている。両国の関係が深まったきっかけは第4次中東戦争である。正恩氏の祖父である金日成主席が、アサド氏の父であるハーフェズ・アサド大統領らの求めに応じて空軍パイロットを派兵。ともに、強力無比なイスラエル空軍と戦ったのだ。
(参考記事:第4次中東戦争が勃発、北朝鮮空軍とイスラエルF4戦闘機の死闘)把握されている限り、金正恩氏とアサド氏は会ったことはない。それでも、金正恩氏がアサド氏との関係を重視してきたのは明らかだ。朝鮮中央通信の報道を見る限り、金正恩氏が毎年必ず誕生日の祝電を送る相手は、ラオスとキューバの首脳、そしてアサド氏だけだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面金正恩氏がアサド氏との関係を大切にするのは、自分の祖父とアサド氏の父の間で築かれた「血盟」のためだけでなく、ともに小国ながら、米国の圧力に立ち向かっている「同志」のように考えているのではないか。つまりは「心の友」とも言える間柄だ。
また、アサド氏も2018年5月30日に駐シリア北朝鮮大使と歓談した際、「今後、朝鮮を訪問して金正恩閣下に会う決心である」と発言。さらに「シリア政府は今後も、朝鮮指導部の全ての政策と措置を全面的に支持し、朝鮮との友好関係を変わることなく強化し、発展させていく」などと述べたという。
このような両首脳の関係を考えたとき、仮に金正恩氏が病床で重篤な状態にあるとしたら、北朝鮮指導部は金正恩氏本人になりすまし、アサド氏に対して「偽装メール」を送るようなことをしただろうか。ちなみに脱北した元外交官によれば、金正恩氏の外国首脳に対する祝電は、発信の半月前までには完成させ、最終的な発信の判断は第1外務次官が行うという。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面韓国のデイリーNKは、金正恩氏は12日に心血管疾患の手術を受けたが、順調に回復していると報じている。
金正恩氏の健康に何か問題があったとしても、重篤な状態ではなく、デイリーNKの報道が真実に近いのではないかと思う根拠のひとつである。