新型肺炎で注目…北朝鮮でマスクが使われてきた「違う目的」

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中国での新型コロナウイルスの感染拡大に加え、本格的なスギ花粉飛散開始が迫っていることも重なり、日本各地でマスクが品切れになっている。通販サイトでは、法外と言ってもいいほどの高値で販売されている状況だ。

一方、北朝鮮でもマスクの値段が上がっていると、咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

先月30日まで1枚6000北朝鮮ウォン(約78円)で売られていたが、翌日には7000北朝鮮ウォン(約91円)に上がり、今ではいくら出しても買えなくなってしまったったと伝えた。「ウイルスの感染を防ぐにはマスクの着用が必要だとの知識が広まり起きた現象」(情報筋)だと言う。

そんな知識を伝えているのは北朝鮮の国営メディアだ。新型コロナウイルスに関する報道を異例の速さと頻度で報じている。

北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は1日付の社説で「ひとりの犠牲者も出すな」と強調。「新型コロナウイルス感染症を徹底して防ごう」という記事で、ウイルスの正体、感染時の症状などについて詳しく伝え、予防法も紹介した。

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「個人衛生をよく守り、マスクを使い、石鹸で頻繁に手を洗ったり、アルコール成分の入った手の消毒剤を使うのがいい。肉類、卵類などの食べ物はよく火を通してから食べなければならない。風邪をひいている人や、動物との接触をできる限り避けなければならない」

また、朝鮮中央テレビは定時(17時と20時)のニュースのみならず、他の番組の放送中に臨時ニュースの形で、新型コロナウイルスの現状や、マスクの正しい付け方など予防対策について連日放送している。

実は北朝鮮でマスクは、衛生目的よりも防寒用具のひとつとみなされている。また、病気でマスクをすると、肺炎やインフルエンザなど、かなり重い病気と勘ぐられる。

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「元々マスクは冬に山に登る時や、反航空訓練(防空訓練)に必要な非常用のリュックに入る備品に過ぎなかった」(情報筋)

(参考記事:「わが国に入ってきたら終わり」北朝鮮国民、新型肺炎に震撼

しかし、テレビでマスクをする人の映像が頻繁に流されたこともあってか、感染予防の目的で着用するようになったようだ。

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北朝鮮国内ではマスクの製造が行われ、市場に流通しているため、他の商品のように輸入に頼る状況とはなっていないとのことだ。ちなみに、布製の何度も洗って使えるものが主流だ。

中国と国境を接する地域の市場の商人たちは、常にマスクを着用するようになった。「商売をするならマスクは欠かせない」とは言うものの、マスク無しで今後商売をやっていけるのかという心配の声が漏れ聞こえるという。

情報筋は「今までの経済制裁でも、買い占めや価格の暴騰は起こらなかったが、ウイルスのせいで貿易が中断され、人の往来がなくなったため、人々の不安を掻き立てている」と、マスク価格高騰の背景を説明した。

今のところ、他の品物の値段に大きな変動はないと情報筋は説明するが、中国と北朝鮮を行き来する商人たちは「この事態がいつまで続くのか」と心配を隠せない様子だったという。一方で、「今のところ、(新型コロナウイルスの)患者は発生していないので、品物が完全になくなるほどの買い占めは起きていない」とのことだ。

北朝鮮は先月30日、国家非常防疫体制を宣言し、翌日からは中国と繋がるすべての国境を事実上閉鎖し、鎖国状態となった。

(参考記事:北朝鮮が新型肺炎で国家非常防疫体制を宣言