韓国紙・東亜日報の敏腕記者で、脱北者でもあるチュ・ソンハ氏が自身のブログで、北朝鮮の金元弘(キム・ウォノン)前国家保衛相が昨年5~6月頃に処刑されたと伝えている。
秘密警察である国家保衛省は、拷問や公開処刑、政治犯収容所の運営を担当し、金正恩体制の恐怖政治の中心となっている機関だ。たとえば2013年8月には、銀河水(ウナス)管弦楽団と旺載山(ワンジェサン)芸術団のメンバーら9人を公開処刑し、その様子を芸能関係者数千人に「見学」させたとされる。
(参考記事:女性芸能人たちを「失禁」させた金正恩氏の残酷ショー)
金元弘氏は、金正恩政権が本格的に始動した2012年4月に国家保衛相となり、張成沢(チャン・ソンテク)元朝鮮労働党行政部長をはじめ、数多くの幹部粛清で先頭に立ってきた。
ところが、2017年1月に電撃的に解任され、「平壌市郊外の協同農場で働いている」などとする情報が伝えられていた。北朝鮮では、幹部が一時的に失脚して農場や炭鉱に送られ、「革命化」と呼ばれる再教育を経て復活する例がたまにある。しかし、金元弘氏にはそうした機会も与えられず、遂に処刑されてしまったということだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面国家保衛省のような機関のトップまでが処刑されるとは、金正恩氏がいかに冷酷無比であるかを、如実に物語るエピソードと言えるだろう。
チュ・ソンハ氏によれば、金元弘氏が解任されたのは、汚職の容疑で取り調べを受けていた民用航空総局のカン・ギソプ総局長が、拷問に耐えきれず死亡してしまったためだという。カン氏は金正恩氏の妻・李雪主(リ・ソルチュ)氏の親戚だったという。またそれだけでなく、金正恩氏が力を入れていた順安(スナン)空港の新築工事を指揮し、正恩氏の寵愛を受けていたとされる。
国家保衛省がそのような人物を逮捕するためには、間違いなく金正恩氏の裁可が必要となる。金正恩氏は恐らく、「聖域なき捜査」を徹底させるため、敢えて側近の逮捕を認めたのだろう。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面だが、カン氏は汚職を自白する前に死んでしまい、そのため金元弘は「無実の人間を死に至らしめた」ことの責任を問われる羽目になったということのようだ。