この夏、韓国の大型書店で軒並みベストセラーを記録した書籍『反日種族主義』の邦訳本が、もうすぐ日本で発売される(すでに一部店頭には並んでいる)。
李栄薫(イ・ヨンフン)元ソウル大学教授ら6人の研究者が執筆した同書は植民地統治下の朝鮮半島で「日本による土地やコメの収奪はなかった」「従軍慰安婦の強制連行はなかった」などと主張し、韓国で大いに物議を醸した。
韓国の左派からは同書に対し、「日本の公式見解をそのまま引き写したものだ」などという批判が浴びせられたが、一読してみれば、それがまったく的外れであることがわかる。例えば、娘の進学や一族の投資を巡りスキャンダル塗れとなり、就任早々に辞任したチョ・グク法相は、同書を読みもせずに「ゴミ」呼ばわりした。
しかし、いかに彼らの歴史認識とかけ離れていても、同書は決して「ゴミ」などではない。ていねいに検証すべき立派な論考である。
それに李栄薫氏らは決して、日本による朝鮮半島支配を美化しているわけではない。その時、何が、どのようにして起きたかを再現することに努めているだけだ。そしてその目的について同氏は、本の序盤で述べている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面同氏によれば、韓国の歴史家が日本の朝鮮半島支配について事実を誤解したりわい曲したりするのは、「日帝が朝鮮を支配した目的、メカニズム、結果、その歴史的意義を理解できなかった」からだという。たしかにこれらを理解できなければ、歴史論争がまともなものになるはずがない。同書の著者らは、この点についての認識の修正を試みたわけだ。
それでも、日韓の国交正常化交渉では「そもそも(韓国側が日本に)請求するものなどなかった」などとする同書の主張は、反日に染まった韓国左派には到底、直視できないものかもしれない。しかし、どうしてそのように言えるのかについて目を向けなければ、議論をリードすることはできない。
恐らく、韓国でベストセラーになった同書を、日韓の歴史問題に関心を持つ多くの日本人が手に取るだろう。そして韓国側との論戦に備え、大いに参考にするかもしれない。同書で理論武装した日本側の論客は、従来にも増して強力になるのではないか。そのような強力な主張と向き合ったとき、同書を読みもせず「ゴミ」呼ばわりした韓国左派は、大いに後悔することになるかもしれない。
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