北朝鮮の対韓国宣伝サイトである「ウリミンジョクキリ(わが民族同士)」は5日、韓国が日本との対立解消に向けて動き出したことを非難する論評を掲載した。これこそは、韓国の孤立を望む北朝鮮、そして金正恩党委員長のホンネと言える。論評はまず、次のように主張している。
安倍政権は高みの見物
「少し前、南朝鮮(韓国)当局は外交・安全保障関係者を日本に派遣し、『国務総理』を倭王(天皇)即位式に送り、『未来志向的な「韓」日関係構築』だの、『「韓」日関係の膠着を打開するための疎通と交流の推進』だのと言った卑屈な醜態をさらした。
これは「韓日軍事情報保護協定(GSOMIA)」終了の決定を撤回し、日本との対立を解消するよう求める、米国の圧力に屈した事大屈従行為に他ならない。
その後も米国が圧力を加えてくるからと言って、罪に罪を重ねている日本を許すことなどできるだろうか」
ここに出てくる日本の「罪」とは、いわゆる過去の歴史問題のことだ。論評はその事例を列挙した後、次のように断言する。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「このような日本との関係改善を云々すること自体が、容認しがたいことだ」
そして、日本との関係改善を図る行為は、「親日積弊清算」を求める民心に対する裏切り行為だと強調している。
北朝鮮メディアはこれまでにも、GSOMIA問題を巡って多数の論評を出している。例えば9月2日には、同サイトはGSOMIA破棄に関する記事を3本も公開している。そのうちの1本は、「反日闘争の火柱も高く、親日積弊残滓を徹底的に清算してしまうことで、屈することを知らぬ民族の気概を大きく示すべきだ」などとして、GSOMIA破棄を支持する韓国民衆を煽る内容だ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面もう1本は、韓国政府のGSOMIA破棄の決定に対して「憂慮と失望」を表明し、日米韓の3国協調の維持を主張する米国の態度は不当な干渉であると排撃する内容である。そして残る1本は米国に対し。日本の韓国への「経済報復」に対しては見て見ぬふりをしながら、韓国の決定に激怒するのは「二重的な態度」であると断罪するものだ。
このように見ると、これらの記事の趣旨は韓国の文在寅政権にエールを送るものであるようにもみも思えるだろうが、実はその正反対なのである。記事の目的はあくまで米韓同盟に依存する文在寅政権を非難しつつ、左派の支持勢力を離反させることにあるのだ。
事実、文在寅政権はGSOMIA問題で袋小路に入り込んでしまった。協定は22日いっぱいで失効するが、その前に破棄を撤回せねば、米国がどんな圧力を加えてくるかわからない。日本の輸出規制措置の緩和を撤回の交換条件として掲げているものの、安倍政権は気にする風もなく高みの見物を決め込んでいる。ここで安易にGSOMIA破棄を撤回すれば、反日に染まった文政権の支持勢力の反発を食う。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面北朝鮮は、こうした文政権の支持派にガスを送り込んでいるわけだが、左派政権下で公然と親北朝鮮集会を開くグループが台頭した韓国社会の現状を考えると、北朝鮮メディアの心理工作の影響力も、侮るべきものではないのである。
(参考記事:「韓国外交はひどい」「黙っていられない」米国から批判続く)