韓国のニュースサイト、リバティ・コリア・ポスト(LKP)は10月28日付で、北朝鮮国内では今年9月までに、「反国家犯罪」の捜査が9千件も行われていると伝えた。反国家犯罪の容疑者はほぼ間違いなく、何らかの形で粛清される。1件につき、数人が粛清の対象になることもある。
LKPは8月の時点で、平壌では秘密警察である国家保衛省と軍の保衛司令部が1200人余りの幹部クラスを拘束し、反国家行為の容疑で調査を行っていると伝えていた。また、拘束された容疑者の急増に伴い、隔離監房が不足し、西平壌駅の近くにある護衛司令部81旅団6大隊の兵舎を保衛司令部に移管する措置も取られたとしていた。
女性芸能人の「処刑見学」
こうした動きが、平壌だけでなく地方においても見られるということだろうか。
LKPの情報が事実ならば、1990年代の「深化組事件」や「フルンゼ「フルンゼ軍事大学留学組事件」、2013年からの「張成沢一派粛清事件」と並ぶ、大々的な粛清が進行していることになる。
(参考記事:同窓会を襲った「血の粛清」…北朝鮮の「フルンゼ軍事大学留学組」事件)これらの中でも、2万5千人が犠牲になったとされる深化組事件は、時代背景が現在と似た部分がある。同事件は、「苦難の行軍」と呼ばれた未曽有の食糧危機のさなか、民衆の不満が体制に向かわないようにするために、金正日総書記がでっち上げた大規模なスパイ事件である。
(参考記事:「幹部が遊びながら殺した女性を焼いた」北朝鮮権力層の猟奇的な実態)人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面
一方、食糧危機により犯罪が多発し、国全体が混乱に陥ったこの時代、北朝鮮の各地で公開処刑が繰り返された。その理由は極めてシンプルだ。見せしめのためだ。衆人環視の中で犯罪者を残忍に殺害することで恐怖を与え、秩序の維持を図るという、「死刑には犯罪抑止効果がある」との考えに基づいた行為なのである。
もっとも最近では、国際社会からの人権問題に対する批判を意識してか、かつては公開で行っていた処刑を非公開で行う傾向にあった。金正恩党委員長は2016年、全国の司法機関に「群衆を集めて死刑を行う『群衆審判』『公開銃殺』を禁じる」との指示を下している。それ以降、公開処刑は影を潜めていたのだが、北朝鮮当局は最近になって再開させつつあるようだ。
理由は明らかではないが、気になるのは経済制裁の影響だ。経済難による社会の動揺が、金正恩体制の足元を揺さぶる危険性を感じ取ったからではないだろうか。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面こうした1990年代と現在の一致点を見るとき、LKPの情報を素通りすることはできない。そして金正恩氏は、自分が気に入らない部下たちを残酷な処刑させる際、その様子を女性芸能人らに無理やり「見学」させた「前科」の持ち主でるということも、忘れてはなるまい。
(参考記事:女性芸能人たちを「失禁」させた金正恩氏の残酷ショー)