韓国政府の「終了(破棄)」決定により、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が11月22日に失効する流れとなっていることに対し、米国の専門家からなおも懸念の声が上がり続けている。
特に、北朝鮮が新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の試射を行ったことで、対潜水艦作戦におけるGSOMIAの重要性が指摘されている。
「韓国の主張ではダメ」
米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)は9日、「GSOMIAの終了は、(対潜水艦)作戦の側面で、米韓日の3国すべてに致命的なダメージを与える」とするジェームズ・ホームズ米海軍参謀大学の書面インタビューを伝えた。
ホームズ氏は「(GSOMIAの失効を受けて)ソウルと東京が米国を経由して情報交換を行うなら、我々は時間の無駄と錯誤、作戦の非効率性に見舞われ、それは韓国と日本、米国のいずれにも不利益をもたらす」と指摘。また、「対潜水艦作戦は水中で行われるために、技術的・科学的に難しい特性がある。水中にいる標的を探知して追跡することだけでなく、(3カ国の)対潜部隊間の通信も、それぞれの上層部間で意思疎通を図るのも難しい」と強調している。
(参考記事:韓国専門家「わが国海軍は日本にかないません」…そして北朝鮮は)さらに同氏は、北朝鮮の潜水艦を侮り過ぎないよう警鐘を鳴らしている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「我々は、我々の対潜水艦戦能力について自信過剰になるべきではない。確かに、北朝鮮の潜水艦が比較的老朽化していることは事実だ。しかし冷戦後、もう二度と海中で(旧ソ連海軍のような)深刻なライバルと対峙することはないと信じた米海軍が、対潜水艦戦能力を衰退させたことも事実なのだ」
つまり、対潜水艦戦におけるこうした不確実性を最小化するためにも、GSOMIAを通じた日米韓の円滑な情報共有と意思疎通が重要であるというわけだ。
この点の重要性については、イアン・ウィリアムズCSISミサイル防衛プロジェクト副局長もVOAで同様の指摘をしている。同氏によれば、1982年にイギリスとアルゼンチンが戦ったフォークランド紛争においても、アルゼンチン軍の旧式潜水艦は騒音が非常に大きかったにも関わらず、英国海軍はこれを容易に探知できなかったとされ、北朝鮮の潜水艦を巡っても同様の状況が起きうるとしている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面こうしたリスクを低減するためにも日米韓の情報共有は必須であり、また日頃からの訓練を通じた意思疎通の円滑化も大事だ。
ちなみに日米韓は日韓がGSOMIAを締結した後の2017年4月、韓国・済州島の近海で初の合同対潜作戦演習を実施している。VOAの取材にコメントした米ハドソン研究所の村野将(ムラノ・マサシ)研究員は、GSOMIAが失効すると、こうした取り組みも法的根拠を行う可能性があると指摘している。何故なら、韓国政府がGSOMIA失効の穴埋めになると主張している日米韓の「情報共有に関する取り決め」(TISA)は、対象となる情報が北朝鮮の核とミサイルに限定されているためだという。
(参考記事:「韓国外交はひどい」「黙っていられない」米国から批判続く)