金正恩「外交官4人を銃殺」情報の深層

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韓国の情報機関、国家情報院(国情院)の徐薫(ソ・フン)委員長は16日の国会情報委員会全体会議で、2月の米朝首脳会談決裂の責任を問われ処刑されたとの説が出ていた北朝鮮国務委員会の金革哲(キム・ヒョクチョル)対米特別代表について、「生きているものと見ている」との認識を示した。

金革哲氏を巡っては韓国紙・朝鮮日報が5月31日、北朝鮮消息筋の情報として、3月に平壌郊外の美林(ミリム)飛行場で銃殺されたと報じた。美林飛行場は、過去にも公開処刑が行われてきた場所だ。

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ただ、この報道については当初から疑問を呈する声が少なくなかった。4月13日に金革哲氏を目撃したとの情報が出ていたほか、米CNNは6月、複数の消息筋の話として、同氏は拘束されているものの生存していると報じた。

今のところはまだ、金革哲氏の生存が確認されたわけではないが、朝鮮日報の報道は誤りであった可能性がいっそう強まったと言える。

北朝鮮の粛清人事を巡っては、このような情報の錯そうがしばしば起きる。2016年2月には、朝鮮人民軍の李永吉(リ・ヨンギル)総参謀長が処刑されたとのニュースが大きく報道されたことがあったが、李氏は同年5月に開催された朝鮮労働党第7回大会に登場し、健在が確認された。

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こうした誤りが起きる第一の理由は、金正恩氏があまりに頻繁に公開処刑を行ってきたため、北朝鮮ウォッチャーやメディア関係者の間である種の先入観が働いてしまうからかもしれない。

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一方、今回の件との関連で言うなら、アジアプレスは4月24日、北朝鮮国内で「外務省幹部4人が銃殺された」とする噂が拡散していると報じていた。同時に、その時点で確認された事実はないとし、会談決裂に伴う金正恩氏の権威失墜を最小限に抑えるため、原因は外務省幹部と裏切り行為にあるとする情報を「当局が意図的に流布させる可能性がある」との抑制の利いた分析もあわせて紹介している。

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これらにもうひとつ要素を付け加えるなら、北朝鮮が最近になって、ここのところ手控えていた公開処刑を再び活発化させている事実があるかもしれない。

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2月の米朝首脳会談の決裂は、北朝鮮当局のみならず、同国民にとっても大きなショックだった。そこで条件反射的に、「タダで済むはずはない」「誰かの血が流れるに違いない」との「見込み」が働き、公開処刑再開の殺伐とした空気と相まって、北朝鮮国内で「外務省幹部4人が銃殺された」との噂がまことしやかに広まったのではないだろうか。

驚くべきは、韓国メディアの朝鮮日報までが、その影響を受けたように見えることだ。

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もちろん、金革哲氏の生存も、外務省幹部4人の銃殺説も、その真偽はまだ確認されていない。ただ、北朝鮮国外にいる我々は、その真偽の確認を能動的に行う術が著しく限られている。

よく「謎の国」と形容される北朝鮮だが、彼らはそれを武器に、関係各国に対し巧みな情報戦・心理戦を行っているということも、決して忘れてはならない。