文在寅政権の「大いなるカン違い」を象徴する1枚の写真

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韓国・ソウルの外信記者クラブで3日、康京和(カン・ギョンファ)外相の記者懇談会があった。参加した記者によると、「韓国政府は北朝鮮の人権問題はどうするのか」との質問を受けた康京和氏は、次のように答えた。

「北朝鮮の人権問題を巡る国際社会の努力については、わが政府も支持し、関与している。(しかし)政府が非核化や平和体制の(対話の)テーブルにこの事案を上げるのは適切でない。平和体制を築く過程で北朝鮮との関与が深まり、国際社会との交流や開放が拡大しながら、北朝鮮の住民の人権も好転し、いつかはこの問題を本格的に論議するときが来ると思う」

早い話、現在の韓国政府にとって、北朝鮮の人権問題は優先順位が低いということだ。同氏は国連の人権高等弁務官事務所などでキャリアを積んだ人物でもあり、人権の重要さについては人並み以上に良くわかっているはずだ。上記の言葉は、政治家として朝鮮半島の「現実」と向き合い、敢えて冷厳な言葉を述べたものだろう。

しかし、朝鮮半島の「現実」とは、北朝鮮当局との対話を通して見えるものがすべてではない。そのことを象徴するような場面が、記者懇談会の直後に見られた。康京和氏が会場を離れようとしたとき、中国で逮捕された脱北者7人の救出を訴えている市民団体と遭遇したのだ。

報道によれば、7人中国・瀋陽市郊外の隠れ家に潜伏していたところを中国当局により逮捕された。その中には、先に脱北した両親と合流すべく国境の川を渡った、9歳の女児も含まれている。現在は北朝鮮に強制送還される危機に直面していると見られ、そうなれば拷問を含む過酷な処罰が下されるのが普通だ。

(参考記事:9歳女児を待つ残酷な運命…北朝鮮に強制送還の危機

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2017年7月には父母と息子1人、娘2人の5人家族が脱北後に中国当局に摘発され、将来を悲観して服毒自殺する出来事もあった。

ちなみに、康京和氏と遭遇した市民団体の女性メンバーのひとりは、「韓半島の人権と統一のための弁護士の会」に所属する弁護士で、「9歳の娘まで銃殺されないよう助けてください!」と書かれた手書きのプラカードを掲げていた。これもまた、決して無視してはならない北朝鮮の現実なのだ。

康京和氏は市民団体の人々に対し「詳細は言えないが、最善を尽くす」と語りかけたという。その言葉に、ウソがないことを信じたい。逮捕された脱北者の救出は、中国当局を説得しない限りは不可能だが、中国としては北朝鮮に対する立場もある。当事者の体面をつぶさず脱北者を救出するには、韓国政府が外部に詳細を明かすわけにはいかないのは事実だ。

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まずは首尾よく、この7人が救出されるよう期待したい。だがもちろん、それですべての問題が片付くわけではない。また康京和氏が語ったように、平和体制を構築する中で北朝鮮が変わっていくという保証もない。それなのに、訪れるかどうかもわからない変化を待つ間に、おびただしい数の北朝鮮国民が犠牲になるのだ。

そもそも、金正恩党委員長は自らの独裁体制を維持するために核兵器を作ったのであり、非核化対話に応じているのも目的は同じだ。そして、独裁体制を支える恐怖政治は、国民に対する人権侵害と表裏一体である。

つまり、文在寅政権は大きな勘違いをしているということだ。北朝鮮国民の人権問題は、平和体制を構築するついでに解決されるべきものではない。北の人権問題があるから、圧力なり対話なり、すべての手段を動員して、北朝鮮を変化に導かなければならないのだ。