公開処刑は空から見られていた…証拠をつかまれた金正恩氏

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北朝鮮の公開処刑は、その現場が衛星写真に捉えられたことがある。

2014年10月、平壌に近い姜健(カンゴン)総合軍官学校を撮影した民間衛星の写真を見ると、広場に何らかの物体10個が一列に並べられている。それに向かって6門のZPU-4対空機銃が並べられていて、その後ろには、射撃の様子を観察するためと見られる場所が設けられている。

この画像を米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)に提供した米北朝鮮人権委員会(HRNK)のグレッグ・スカラチュー事務総長によれば、「対空機銃を使って公開処刑を行っている状況に間違いない」と語っている。

そして、アジアプレスは同年10月、北朝鮮の内部情報に基づく「平壌で労働党幹部を集団銃殺か 金正恩氏の指導に違反」と題した記事の中で、10人の労働党幹部が同軍官学校で処刑されたと報じており、HRNKの分析と時期的に符合するのだ。

ほかにも、北朝鮮国内で公開処刑を見たとする脱北者の証言は、それこそ何百とある。

(参考記事:「死刑囚は体が半分なくなった」北朝鮮、公開処刑の生々しい実態

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ちなみに、ZPU-4対空機銃は14.5mm重機関銃4丁をひとつにまとめたもので、自動車に乗せたり、けん引したりしなければ運べないほど大きい。だからこそ、軍事用ほど解像度の高くない民間衛星の写真にも捕捉されたのだろう。

北朝鮮当局は最近になって公開処刑を再開したと見られているが、人間を文字通りミンチにするようなZPU-4が使用されているとの情報はまだない。また、1年間に韓国入りする脱北者の数は減少傾向にあり、今後、どれだけの目撃談が集まるかもわからない。

ただ、金正恩党委員長が核兵器開発で世界の注目を集めた結果、北朝鮮の人権問題もまた、主要国の関心の的となっている。世界の耳目が北朝鮮に向かう中で、今後も繰り返されるであろう公開処刑の実態を隠し続けるのは不可能だろう。

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米トランプ政権が人権問題に熱心とは言えないことは、金正恩氏にとっては幸いだった。米国から対価を引き出す「カード」として使える核兵器とは異なり、恐怖政治で支えられた金正恩体制の根幹に触れる人権問題では、北朝鮮は決して妥協できないからだ。トランプ大統領が人権問題から目を背けてくれたからこそ、米朝対話はどうにかここまで来たのだ。

しかし今後、米朝対話が(続くにしても)長期化するのは間違いないだろう。そうなれば米国で政権交代が起き、より人権問題に敏感な大統領が表れるかもしれない。

金正恩氏が公開処刑を再開したのは体制を引き締めるためだろうが、その行動が、体制をいっそう袋小路に追い込みかねないのである。(おわり)