「報復殺人」で警察官70人死亡…秩序崩壊に向かう北朝鮮社会

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北朝鮮当局が、ひところ手控えていた公開処刑を再開している。背景として気になるのは、国際社会からの制裁によって深刻化している経済難だ。

北朝鮮の社会主義経済システムが崩壊した1990年代の大飢饉「苦難の行軍」の時代、北朝鮮社会は経済難により秩序が悪化。当局はこれを恐怖で抑止すべく極刑で臨み、窃盗犯なども次々に銃殺した。

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では、最近の北朝鮮はどうか。内部の情報筋からは、やはり治安の悪化が伝えられている。

デイリーNKの内部情報筋によれば、咸鏡南道(ハムギョンナムド)端川(タンチョン)市の剣徳(コムドク)鉱山で昨年11月12日、薬物中毒者や農場から穀物を盗んだ窃盗犯、そして中国の密輸業者から前金を受け取り、国の生産物である鉛や亜鉛を定期的に盗み出し、売り渡していた鉱山労働者や協力者など36人に対する公開裁判を行った。

「苦難の行軍」の時代ならば確実に死刑になった罪状だが、このときはまだ、北朝鮮は公開処刑を控えており、被告はいずれも懲役刑を宣告されている。

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しかし北朝鮮は昨年の1年間を通じ、治安の悪化に危機感を募らせたかもしれない。咸鏡北道(ハムギョンブクト)の消息筋が韓国のリバティ・コリア・ポスト(LKP)に語ったところによれば、昨年末までの1年間で、全国の保安員(警察官)に対する殺人事件は70件を超えるという。

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こうした事件の多くは、無実の罪を着せられ、刑務所での服役を余儀なくされた人々の報復と見られている。

北朝鮮の保安員は取り締まりの権限を振りかざし、庶民からワイロを搾り取ることを生業としている。要求に応じなければ様々な言いがかりをつけて逮捕し、刑務所送りにすることもある。また、同様のやり方で女性に性行為を強要することもあり、悪徳保安員に対する庶民の恨みは深い。

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ただ、報復殺人の背景がどのようなものであっても、大衆の権力に対する挑戦を北朝鮮当局が見過ごすはずはない。北朝鮮当局にとっての「守るべき秩序」とは、金正恩体制を維持するために必要な秩序のことだからだ。

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北朝鮮当局がここへ来て公開処刑を再開したのは、経済難による社会の動揺が、金正恩体制の足元を揺さぶる危険性を感じ取ったからではないだろうか。