「金正恩印」のお菓子作りに失敗した5人の悲惨な運命

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平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、今月15日の太陽節(金日成主席の生誕記念日)に合わせ、北朝鮮当局は先月末までに子どもたちに「お菓子セット」をプレゼントすることにしていた。ところが、道内の粛川(スクチョン)、文徳(ムンドク)、寧遠(ニョンウォン)など一部地域では、期日までにお菓子の生産ができなかった。

これは、金王朝の始祖である金日成氏、そして現在の最高指導者である金正恩党委員長の権威を傷つける重大な過誤だ。北朝鮮では、万死に値する重罪である。

(参考記事:金正恩命令をほったらかし「愛の行為」にふけった北朝鮮カップルの運命

朝鮮労働党平安南道委員会、人民委員会(道庁)などが検閲(査察)を行った結果、工場に電力がまともに供給されなかったことが原因と判明した。

配電部の関係者が取り調べを受け、責任者5人が処罰された。処罰の内容は詳らかにされていないが、少し前なら公開処刑にされてもおかしくはなかった。現に金正恩氏は2015年8月、視察したスッポン養殖工場の管理不備に激怒。支配人を銃殺している。

もっとも、国家的な祝日に配られる「お菓子セット」が、最高指導者の権威を保つのに役立っているかは疑問だ。かつては子どもたちの憧れだったが、目と舌の肥えた今の北朝鮮の子どもたちには不人気だ。セットに漢方薬ゼリーを入れるなどの「オヤジ的」なチョイスが、中国製のスナック菓子に慣れた子どもたちにウケるはずがないのだ。

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近年では、このお菓子セットのあまりの人気のなさが、政治的事件を巻き起こしてもいる。

それに今回の一件とて、処罰された5人に本当に責任があったかさえ疑わしい。

北朝鮮当局は、国民の生活をないがしろにして石炭を次々と輸出する「飢餓輸出」を行い、外貨を獲得してきたが、一昨年8月の安保理制裁決議2371号と、それを受けての中国商務省の命令で中国への輸出ができなくなってしまった。

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その石炭を内需向けに回すことで、慢性的な電力難がいくらか解消された。皮肉なことに制裁が国民生活を向上させたわけだが、それもつかの間だった。外貨やエネルギー不足で各地の炭鉱が操業を停止している影響で、電力事情が再び悪化に転じてしまったのだ。

つまり処罰された5人は、国際社会による経済制裁と、それを呼び込んだ無謀な核・ミサイル開発の犠牲者に違いないのである。