北朝鮮では先月10日、国会にあたる最高人民会議の代議員選挙が行われた。名前も聞いたことがなければ姿を見たことすらない候補者に賛成票を投じるもので、投票率は99.9%に達し、全員が当選する。
そもそも、選挙キャンペーンのポスターの決まり文句が「皆が賛成投票しよう!」というものだ。神聖な政治的儀式として扱われる選挙だけあって、選挙期間中には些細な犯罪やトラブルも許されない。
(参考記事:金正恩命令をほったらかし「愛の行為」にふけった北朝鮮カップルの運命)そんな選挙の最中に朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の軍官(将校)が、首都平壌市内のレストランで乱闘騒ぎを起こした。
平壌のデイリーNK内部情報筋によると、事件が起きたのは市内中心部の平川(ピョンチョン)区域のレストランだ。
朝鮮人民軍第7総局の中隊長、小隊長らがレストランで食事していたところ、些細なことで隣席の大学生グループと口論になった。やがて乱闘へと発展し、民間人に手を出すという軍人としてあるまじき行為に及び、保安員(警察官)が出動する騒ぎとなった。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面北朝鮮におけるこのような乱闘騒ぎは、非常に激しいものになりがちだという。今年3月にはロシアの地方都市で北朝鮮労働者とタジキスタンの労働者が乱闘を繰り広げ、その動画がネット上で公開されたこともあった。
事件はすぐさま、第7総局の上級部隊に報告された。関わった軍官のうち1人は軍教養所(軍刑務所)での6ヶ月拘留処分、2人は降格処分の重い処分が下された。一方で、大学生については処罰されたかどうかは伝わっていない。ちなみに彼らは高官の子息だった。
選挙以外でも、政治的に重要とされる日に事件や騒ぎを起こした者に対しては厳しい処罰が加えられる。また、政治的に重要とされる施設でも同様だ。場合によっては、最高指導者に対する不敬罪に問われる。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面昨年12月17日の金正日総書記の命日の前日、北東部の清津(チョンジン)では、若者グループがレストランで食事中に乱闘騒ぎを起こし、全員が逮捕された。その場に居合わせた地元幹部は厳罰を指示しており、最悪の場合は収容所送りになりかねないものだったが、その後の処遇は不明だ。
一方、昨年の8月には、金日成主席の夫人で、金正恩党委員長の祖母にあたる金正淑(キム・ジョンスク)氏の銅像などがある「聖地」の警備に当たっていた警備隊が、地元の男性に暴行し瀕死の重傷を負わせる事件が発生したが、加害者はもちろん、地元の警察幹部も責任を問われかねない状況に追い込まれた。