金正恩氏も激怒した「女性兵士への性暴力」の卑劣な手口

1904年3月4日、米国のニューヨークで、女性たちが参政権を求めて立ち上がりデモを行った。それがきっかけになり、毎年3月8日は国際女性デーとなっている。北朝鮮では「国際婦女節」と呼ばれるが、金正恩党委員長は今年のこの日に際し、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)内で蔓延する性暴力に対して厳正に対処する方針を示した。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、2月下旬から軍において「反性暴力闘争」が行われている。軍の幹部による、女性兵士に対する言語的、身体的な性暴力の根絶を目的とした今回の闘争は、金正恩氏の指示に基づくものだという。

指示では、女性兵士の待遇を改め、性的暴力を根絶すると同時に、女性兵士に対しては「不当な上納要求、暴力に対しては信訴を行う」ように求めている。

信訴とは、上官からの理不尽な要求などを訴える制度を指す。しかし、「性暴力は被害者にも落ち度がある」とみなす北朝鮮の社会風土において、女性が名乗り出ることは非常に困難を伴うものだ。

(参考記事:人身売買「自ら望んで売られた」被害女性への理不尽な視線

それに対する女性たちの対抗策は、「集団信訴」だ。

平壌の某軍病院の管理職を務める連隊長クラスの幹部は、病院に勤務する女性の軍医や看護師に対して繰り返し性暴力を働いてきた。夜中に軍医や看護師を病棟や自宅に呼び出し、栄養剤の注射、マッサージを指示した上で、性暴力を加える手口だ。女性が歯向かえば「朝鮮労働党に入れないようにする」と脅迫するという卑劣さである。

このような性暴力は朝鮮人民軍のみならず、北朝鮮社会に蔓延しており、加害男性は罪の意識すらなかったようだ。

(参考記事:北朝鮮の権力者男性は「性暴力に無感覚」の疑い

そしてあるとき、この幹部から性暴力被害を受けた看護師が妊娠してしまった。事が広がることを恐れたであろう幹部は、看護師に中絶手術を受けることを指示した上で、強制的に除隊させてしまった。それを知った軍医と看護師が立ち上がり、集団で信訴したという。まさに北朝鮮版の #MeToo である。

信訴を受け、中央党(朝鮮労働党中央委員会)が調査に乗り出し、その結果報告を受けた金正恩氏は激怒。関連した者を厳罰に処し、二度と軍の敷居をまたがせないよう指示した。さらには女性兵士を優遇し、粗末に扱ってはならないとの指示を下した。

北朝鮮当局は、国際社会からの度重なる人権問題の指摘を意識してか、保安員(警察官)や保衛員(秘密警察)に対し、拷問などの人権侵害行為をやめるよう指示を下している。今回の性暴力根絶に関する指示も、その一環と思われる。それ自体は評価すべきことだが、北朝鮮に深く根を張った人権侵害と女性蔑視をなくすことは、そう簡単なことではないだろう。

情報筋も、「女性兵士たちは今回の指示で上官による性暴力、犯罪がなくなることを期待しているが、軍隊ではあまりにも頻繁に行われているので、一朝一夕になくなることはないだろう」と語っている。

(参考記事:「もしかしたら人権侵害かも…」庶民の逆襲を恐れるようになった北朝鮮の警察官

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