物別れに終わった2回目の米朝首脳会談。北朝鮮の国営メディアは会談の成果の有無には具体的に触れていないが、少しの時間差を置いて、北朝鮮国民の間にもその「中身」が伝わりつつある。
「トランプだました」
平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋は、「今回の元帥様(金正恩党委員長)のベトナム訪問は、米国との会談が目的だったため経済制裁の解除という結果が出ると住民は期待していた」が、「会談終了から何日経っても、経済封鎖が解かれるという話がなく、人々は『交渉がうまく行かなかったのだな』と思うようになっている」と伝えた。
(参考記事:金正恩氏から「責任追及され処刑」あぶない筆頭はこの人物)中国と取り引きのある貿易関係者を通じて、米朝間の立場の違いが大きかったという話が巷に広がりつつある。市民の間からは「残念だ」との反応と共に「1杯目の酒で腹が膨れようか」と次の会談に期待する声も上がっている。
期待を持っているのは、情報筋も同じだ。
「お上が元帥様の外国訪問を強調し、講演会も開いているので大きな成果があがるだろうと期待していた人もいる。私のように何かが変わるのではないだろうかと思っていた人もいた。(今回はダメでも)頻繁に会えばまた何かあるのではないか」
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面一方で「個人対個人の取り引きも難しいのに、米国との取り引きが最初からうまくいくとは思っていなかった」と懐疑論を抱く人もいれば、「会談なんて自分とは関係ない」と興味を持とうとしない人もいたとのことだ。
労働新聞が米国に対する批判記事を出さず、会談中の雰囲気は良好だったと伝えていることも、期待論を下支えしている。
「労働新聞と放送で『新たな出会いを約束した』との話があったので、また会うものと考えている。庶民の頭には『米国は信じられない』という考えが根強いので、そう簡単にいくとは考えていない。ただ、経済制裁が早く解決してこそ、貿易を行う機関も市場も生き返る。密輸だけに頼っていては中国の業者に足元を見られ、安定性が担保されていない」(情報筋)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面米政府系ラジオ・フリー・アジア(RFA)の平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋も、北朝鮮国内で「会談が完全に失敗した」との話が広がっていると伝えた。
密輸業者から広まった話だが、市民は「最高尊厳が寧辺(ニョンビョン)の核施設まで差し出すと言ったのに、トランプ大統領がなぜ聞き入れなかったのかわからない」と疑問を持ち、「米国が北朝鮮を屈服させるために、わざとそんなことをしたのではないか」と疑っているとのことだ。
RFAによれば、一部の人は「今回の会談が失敗に終わったのは、寧辺核施設以外にも北朝鮮が公開していなかった秘密核施設まで米国は知っていたのに、それをトランプ大統領に明かさず騙していたからだ」と見ている人もいる。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面他方、「最高尊厳が国際社会で恥をかかされた」と不快感を示す人や、「米国の経済制裁がさらに強化されるかもしれない」と不安感をのぞかせる人など、様々な異見が飛び交っている。
噂の拡散を受けて、保衛部(秘密警察)は公式発表以外の情報が流布しないよう住民監視を強め、「真実」の拡散を抑えようとしていると平安北道(ピョンアンブクト)の別の情報筋が伝えている。