問われるのは「独自の力」
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面昨年6月に続き2回目となる米朝首脳会談が、27~28日にベトナムで開催される。ここで米朝が何らかの合意に達し、米国が北朝鮮の非核化を待たずに制裁緩和を認めた場合、「制裁の旗を振ってきた日本は、孤立してしまうのではないか」との懸念が一部で出ている。
少し前には、対北融和になる韓国に対する「パッシング(素通り)」が指摘されていた。
「最弱」の北朝鮮軍
それが気付いてみたら、素通りされていたのは日本だった、という状況が現実に起こり得るのだろうか?
結論から言えば、日本が外交的に「孤立」するような事態は絶対にないと筆者は考える。政治・経済・軍事的な日本の存在感は、そんなに小さなものではない。それは、北朝鮮も韓国もよくわかっている。
(参考記事:韓国専門家「わが国海軍は日本にかないません」…そして北朝鮮は)ただ、米朝対話に向ける日本の政治家やメディアの目が、米国一辺倒で曇り過ぎているのではないかとは思う。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面米国は、北朝鮮の「完全な非核化」までは制裁を維持すると一貫して言ってきたし、現在も言い続けている。だがそれは、単なる米国が考えているだけのことだ。米国のパワーは偉大だが、世の中のすべてが彼らの思い通りに動いているわけではない。米国にも弱点があればミスもするし、妥協もする。米国と「歩調」を合わせていれば、良い結果がついてくるわけではない。米国は国益のためなら、時には北朝鮮とも韓国とも中国とも「歩調」を合わせるからだ。
日本の「独力」で
まさにその点を突かんとして、北朝鮮は核開発に賭けたわけだ。米国が万能ならば、北朝鮮に核開発を許してしまうこともなかっただろう。実際、金正恩党委員長の「核の暴走」を、指をくわえて見守り、核兵器の「完成」を許してしまった。そのあげくに話し合いの場に出てきたわけだから、対話の場で米国が北朝鮮を圧倒するなどと言うことは、そもそもない展開なのだ。
そもそも論を言うならば、米国が掲げていた「CVID」――完全かつ検証可能で不可逆的な非核化――などというものは、ほとんど実現不可能な構想だ。特に「不可逆的」はあり得ない。どのような検証を行っても、北朝鮮には核開発のデータとノウハウは残ると見るべきだ。しかも同国には天然ウランがある。独裁体制が続き、最高指導者が「もう一度やるぞ」と決断すれば、いつでも核武装プログラムは再始動できる。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面金正恩氏は、非核化は約束したが、無条件降伏をしたわけでも武装解除にも応じたわけでもない。米国が、自国に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の廃棄を優先し、日本を射程に収める短・中距離弾道ミサイルは残ってしまうのではないか――日本国内には、これを懸念する声もある。
しかし北朝鮮は、それぐらい残すのは当然だと考えているだろう。周辺の国々は、世界最強レベルの軍備を整えている。非核化後の自国の軍隊の貧弱さを考えたら、いざという時の「飛び道具」は残しておかなければ不安だ。
日本は決して、東アジアで「軍縮」をリードしているわけではない。それは主権国家の権利だし、その行動にはそれなりの理由があるだろう。だが、それは北朝鮮も同じだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面結論を繰り返すが、米朝首脳会談でどのような合意が生まれようとも、日本が「孤立」するようなことは絶対にない。ただ、北朝鮮に弾道ミサイルを撤去させたり、拉致被害者を取り戻したりしたければ、それは米国に頼るのではなく、自分の力で実現させるしかないというだけのことだ。