北朝鮮国営の朝鮮中央通信は8日、韓国が南北対話を進める一方で軍備を増強していることについて「二重的振る舞いは許されない」とする論評を配信した。この問題を巡っては、すでに他の主要メディアも「(韓国が)下心をさらけ出した」(労働新聞6日付)、「破局的結果について熟考すべき」(民主朝鮮7日付)などとする論評を掲載している。北朝鮮はどうやら、「非核化後」の北東アジアにおける軍事バランスを痛く気にしているようだ。
(参考記事:韓国専門家「わが国海軍は日本にかないません」…そして北朝鮮は)本欄でも繰り返し指摘してきたことだが、現在の朝鮮人民軍(北朝鮮軍)に、本格的な戦争を戦う力はない。ベトナムや中東の戦場にまで派兵し、米軍やイスラエル軍と死闘を繰り広げたのも今は昔の話である。
(参考記事:米軍機26機を撃墜した「北の戦闘機乗りたち」)だからこそ、北朝鮮は核兵器開発に賭けてきたわけだが、近くベトナムで行われる2回目の米朝首脳会談では、大陸間弾道ミサイル(ICBM)や一部の核・ミサイル施設の廃棄で合意が成立するのではないかと見られている。仮にそれが履行されれば、北朝鮮は改めて北東アジアの「最弱国」が確定してしまうわけだ。
(参考記事:金正恩氏の「ポンコツ軍隊」は世界で3番目に弱い)そのような環境の中、北朝鮮が韓国の軍備増強に神経を尖らせるのは当然と言えば当然だ。そもそも、両国は対話を進めてはいるが、それはあくまでいくつかの「タブー」に目をつぶりながらのものでしかない。韓国に対する北朝鮮の不信感は、決して消えていないのだ。
(参考記事:「韓国は正気なのか!?」文在寅政権に北朝鮮から非難 )もちろん、北朝鮮が警戒しているのは韓国だけではない。軍事力の面で言えば、日本の方がよほど気になる存在だろう。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面だから北朝鮮は米朝首脳会談においても、ICBM以外の中・短距離弾道ミサイルの廃棄には頑強に抵抗するかもしれない。ほかにも特殊部隊やサイバー部隊など、「虎の子」と呼べる戦力が残っているとはいえ、海の向こうの国に目に見える脅威を与えられるのは、やはり弾道ミサイルだろう。
非核化の行方とともに、日本の安全保障に大きく影響する問題と言える。