北朝鮮で鉄道運行が正常化…「東京ー岡山」の距離を24時間

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北朝鮮の鉄道は、時間はかかるものの概ね時刻表通りに運行されていたのだが、1990年代半ばの食糧危機「苦難の行軍」の頃からまともに運行されなくなってしまった。それがようやく回復しつつあると、米政府系ラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。

乗客の悲劇

RFAの咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は、「最近の鉄道の運行状況は『苦難の行軍』以前にほぼ戻りつつある」として、北朝鮮の最新鉄道事情について解説している。

例えば、咸鏡北道の清津(チョンジン)から首都・平壌までは、東海道新幹線の東京から岡山までの営業キロに少し足りない712キロの距離がある。この区間を走る列車は、近年では到着まで数日を要していた。それが最近では、遅延しても24時間で到着するようになったという。

2002年度版の鉄道時刻表によると、第8列車は清津を22時12分に出発し、平壌に翌日の18時50分に到着する。第10列車なら13時10分発、翌日11時15分着だ。時刻表通りなら19〜20時間で到着するわけだが、4〜5時間の遅延に収まっているならば「苦難の行軍」以前に戻ったという情報筋の評価は、誇張されたものではないと言えよう。

ちなみに両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)から平壌までの約720キロを結ぶ第1、2列車は、時刻表通りなら23時間で到着することになっているが、2014年ごろには1週間から10日もかかる、シベリア鉄道もビックリという状況になっていた。

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このような鉄道の大幅な遅延は、乗客の悲劇にもつながっている。

(参考記事:北朝鮮「列車に乗っていたら飢え死に」その理由は

情報筋は、鉄道運行が正常化された理由についてディーゼル機関車の導入を挙げた。

「ディーゼル機関車が牽引しているので、電気の有無とは関係なく列車の運行が可能になった」

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北朝鮮の鉄道は、金日成主席の指示で8割以上が電化されている。ソ連など共産圏からの援助があった1980年代までは問題なく運行されていたが、援助が途絶えたことに加え、発電設備の老朽化、また国内経済の混乱によって電力事情が極度に悪化し、運行がままならなくなった。国営企業の操業が止まり、電気機関車の部品が供給されないことが火に油を注いだ。

それでも、平壌と主要都市を結ぶ列車は曲がりなりにも運行を続けたが、支線は運行をしたりしなかったりの繰り返しで、使える代物ではなかった。それがディーゼル機関車が多数投入されたことで、状況が徐々に好転し、ついには苦難の行軍以前の状態を回復したというのだ。

両江道の情報筋によると、今まで長距離移動はソビ車などの民間の移動手段を使うしかなかったが、列車の運行がほぼ正常化したため、乗客が増えている。政府は「人民の生活を画期的に改善させる」ことを当面の目標としているが、それが実現した事例として、列車の運行正常化を挙げて宣伝しているとのことだ。

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しかし、当局が宣伝すれば逆に疑ってしまうのが北朝鮮の人々の心理だ。鉄道運行がいつまで続くのか疑う人も多いとのことだ。ディーゼル機関車の部品や、燃料は経済制裁の対象なので、全く根拠のない疑問というわけでもないようだ。

また北朝鮮の鉄道は、安全性にも極めて大きな問題がある。鉄道が国内経済の動脈として本格的に活躍するようになるまでには、課題山積と言わざるを得ない。